韓国のバッテリー材料大手L&Fは、2023年にテスラと締結したハイニッケル正極材の供給契約について、最終的な取引額が当初予想の29億ドルから、約7.4億ドル(正確には7,386億ウォン相当)へと大幅に引き下げられたことを明らかにしました。
この減額は、単なる一企業の不振にとどまらず、テスラが進める自社製次世代電池「4680セル」の難航と、世界的なEV需要の減退を象徴しています。
1. 大幅減額の背景:テスラの「4680」計画の壁
今回の契約は、テスラが自社生産する新型バッテリー「4680セル」(直径46mm、高さ80mmの円筒形電池)に使用される正極材をL&Fが供給するものでした。しかし、以下の要因が重なり、必要量が激減しました。
- 「ドライ電極」工程の量産難航: イーロン・マスクCEOが提唱した、溶媒を使わずコストを劇的に下げる革新的な「ドライ電極」プロセスが、量産規模での歩留まり(成功率)改善に苦戦しています。
- サイバートラックの不振: 4680電池の主要な搭載先であるサイバートラックの販売が、当初の予測を下回る「大きな失望(ロイター)」となっていることも影響しています。
- 安価な2.5万ドルEVの延期: 4680電池によるコスト削減で実現するはずだった低価格EV計画が停滞しており、材料需要が先細りしました。
2. 関連情報:韓国バッテリー業界を襲う「契約解除」のドミノ
L&Fだけでなく、韓国のバッテリー産業全体が米国の政策変更と需要減退の直撃を受けています。
- LGエネルギーソリューション (LGES): フォードおよび米フロイデンベルグとの計13.5兆ウォン(約94億ドル)規模の契約が今月だけで終了・解除されました。
- SKオン: フォードとの米国内バッテリー合弁事業の中止を決定。フォードは195億ドルもの減損処理を行い、EV計画を大幅に縮小しています。
- 米補助金の終了: 2025年9月に米国のEV連邦補助金が終了したことも、メーカー各社が供給契約を見直す決定的な要因となりました。
3. まとめ:2026年に向けた「冬の時代」
今回のL&Fの契約減額は、テスラの自社製電池戦略がいかに困難であるかを浮き彫りにしました。テスラは現在、自社生産の遅れをカバーするために、皮肉にも競合である韓国のLGESや中国のCATLなど外部サプライヤーへの依存を一部で強めています。
| 項目 | 当初の計画 (2023年) | 現状 (2025年末) |
| 契約額 (L&F-Tesla) | 29億ドル | 約7.4億ドル (75%減) |
| 主な搭載先 | 4680電池、2.5万ドルEV | サイバートラック (限定的) |
| 4680電池の状態 | 低コスト・大量生産 | 歩留まり問題・ドライ工程に苦戦 |
| 市場環境 | EV急成長期 | 需要減退・補助金終了・トランプ政権の影響 |


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