EV走行距離を4倍に?磁場制御でデンドライトを克服した次世代ハイブリッド電池の誕生

Battery主要部材

リチウム金属電池は、現在のリチウムイオン電池(グラファイト負極)の約10倍の理論容量を持ちますが、**「デンドライト(樹枝状結晶)」による爆発リスクが実用化の最大の壁でした。POSTECHのウォン・ベ・キム教授らは、この物理的な課題を「磁石の力」**で解決する独創的なアプローチを開発しました。

1. 技術の核心:磁気変換(Magneto-conversion)戦略

「磁石で鉄粉を操れるなら、リチウムイオンも操れるはずだ」というシンプルな着想から生まれた技術です。

  • 強磁性ナノ粒子の形成: 負極材に「マンガンフェライト(酸化物)」を使用。充電時にリチウムが挿入されると、内部で強磁性(磁石に反応する性質)を持つ金属ナノ粒子が生成されます。
  • 磁場による整列: 外部から磁場をかけると、これらのナノ粒子が電極内で整列し、リチウムイオンの通り道を均一に整えます。
  • ローレンツ力の活用: 磁場中を動く電荷(リチウムイオン)に働く「ローレンツ力」を利用し、イオンを分散させます。これにより、一箇所への集中を防ぎ、滑らかな堆積を実現しました。

2. この技術がもたらす3つの革新

項目詳細とメリット
爆発リスクの解消針状のデンドライト形成を抑制し、セパレーターの貫通(短絡)を防ぐため、安全性が劇的に向上します。
容量の劇的向上グラファイト負極と比較して約4倍のエネルギー貯蔵容量を実現。EVの航続距離を大幅に伸ばせます。
驚異の安定性300サイクル以上の充放電後も99%以上の高いエネルギー効率(クーロン効率)を維持します。

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背景:ポスト・リチウムイオン電池の争い

現在、テスラをはじめとするEVメーカーは「より遠くまで、より安全に」走るための次世代電池を求めています。

  • 全固体電池との比較: 全固体電池もデンドライト抑制を狙っていますが、製造コストと界面抵抗が課題です。今回の「磁気制御」は、既存の液体電解質システムに近い形での応用が期待されており、実用化へのハードルが異なるアプローチとして注目されます。
  • ハイブリッド・システムの利点: この電池は、酸化物内への貯蔵(イオン)と表面への堆積(金属)の両方を行う「ハイブリッド型」です。これにより、リチウム金属単体よりも安定性が高いのが特徴です。

浦項工科大学(POSTECH)の実績

POSTECHは、韓国のシリコンバレーとも呼ばれる浦項(ポハン)に位置し、世界トップクラスの工科大学です。特に電池材料分野では、韓国最大の鉄鋼メーカーPOSCO(ポスコ)との協力関係も深く、基礎研究から商用化への橋渡しが非常に強い組織として知られています。

出典:https://techxplore.com/news/2025-12-magnetic-lithium-enables-safe-explosion.html

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