電気化学的に不活性なジクロロアルカン希釈剤を用いた実用的なリチウム金属電池のための難燃性広温度電解液

Battery主要部材

この研究は、実用的なリチウム金属電池(LMB)の性能と安全性を向上させるため、電気化学的に不活性で弱配位性のジクロロアルカン(C-2Cl)希釈剤を用いた難燃性電解液の開発に関するものです。トリエチルホスフェート(TEP)ベースの高濃度電解液に特定のジクロロアルカンを導入する戦略を探求しています。


🔬 研究の要点と背景

🎯 課題と目標

次世代LMBの商業化は、リチウム金属負極の高い反応性、デンドライト形成による安全性の懸念、および従来の炭酸エステル系電解液の持つ以下の制約によって妨げられています。

  • 狭い電気化学的安定ウィンドウ(約 4.3 V)
  • 限定的な動作温度範囲(-20 ℃ から +50 ℃)
  • 高い可燃性

研究の目標は、低コスト高安全性広い動作温度範囲高い電気化学的安定性、そして優れた電極-電解液界面(EEI)形成能を同時に満たす電解液を開発することです。

💡 新しい電解液の設計

研究チームは、難燃性に優れたTEPを主溶媒とし、LiFSI(リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド)塩を高濃度で用いた電解液をベースに採用しました(LiFSI-TEP)。これに、以下の特性を持つ**ジクロロアルカン(C-2Cl)**を希釈剤として導入しました。

ジクロロアルカンの役割

  • 電気化学的に不活性弱配位性
  • Li+と部分的に配位することで、Li+の輸送/脱溶媒和速度を向上させる。
  • 電気化学的不活性により、アニオン(LiFSIの FSI-)の優先分解を促し、安定なEEIの形成を促進する。

🧪 希釈剤の系統的調査と最適化

🔑 最適な希釈剤の特定

様々な炭素鎖長(C1-2Cl から C5-2Cl)を持つ C-2Cl 希釈剤が調査されました。

  • 溶媒和構造への影響:
    • 炭素鎖長が短い(<= 3)C-2Cl は、Li+と安定した環状キレート構造を形成し、還元安定性に優れる。
    • 炭素鎖長が長い(> 3)C-2Cl は、二重 Li+ 配位構造(DLCC)を形成する傾向があり、還元安定性が悪化する。
  • 物理化学的特性:
    • **C3-2Cl(1,3-ジクロロプロパン)**は、広い液体温度範囲(-99 ℃ から +120 ℃)、高い電気化学的不活性弱配位性を示し、理想的な希釈剤として選択されました。
    • C3-2Cl導入により、電解質のLi+輸率は 0.74 まで向上し、Li+脱溶媒和活性化エネルギーも低下しました。

🛡️ EEI 形成と安全性

最適化された電解液(モル比 1:1.5:3 の LiFSI-TEP/C3-2Cl)は、電極上で以下の利点をもたらします。

  • 負極(Li金属)界面:
    • アニオン由来の無機物に富む、薄く均一な固体電解質界面(SEI)層(平均厚さ約 6.2 nm)を形成。
    • これにより界面副反応が抑制され、Liめっき/剥離のクーロン効率(CE)が向上し(Li || Cuセルで平均 > 98 %)、デンドライトの形成が抑制される。
  • 難燃性:
    • 裸火にさらしても発火しない優れた難燃性を示す。
    • 加速熱量測定(ARC)試験では、市販電解液が熱暴走したのに対し、LiFSI-TEP/C3-2Clを使用したパウチセルは深刻な熱暴走を示さず、高い安全性を示した。

⚡ 実用的な電池性能

🔋 高電圧 LMB 性能

Li(50 μm)|| NCM83(Ni0.83Co0.12Mn0.05O2、面負荷 5.6 mAh cm-2)の実用的なパウチセルでの試験結果は以下の通りです。

項目LiFSI-TEP/C3-2Cl
サイクル安定性(25 ℃)100サイクル超で 94.1 % の高い容量保持率
レート特性高レート条件下で容量利用率が効果的に改善
動作温度範囲-60 ℃ から +60 ℃ の広い温度範囲で安定して動作。-60 ℃ でも 25 ℃ 容量の 50 % に達する高い放電能力。

🛠️ 関連情報: グラファイト負極との非適合性

この電解液は、グラファイト(Gr)負極を備えたLiイオン電池システムに適用した場合、Gr電極の剥離と構造破壊を引き起こし、現段階では適していないことが示されました。


📝 まとめ

本研究は、電気化学的に不活性で弱配位性の1,3-ジクロロプロパン(C3-2Cl)を希釈剤として用いることで、低粘度、広い液体温度範囲、不燃性、高 Li+ 輸送/脱溶媒和能力を同時に達成した難燃性LMB用電解液を開発しました。この電解質は、実用的なLMBにおいて、広い温度範囲での優れた性能と高い安全性を実現し、次世代LMBの実用化に向けた効果的な戦略を提案しています。

出典:https://www.nature.com/articles/s41467-025-65138-8

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