固体電解質 LATPの界面安定性と構造堅牢性を両立させる階層的二重最適化

Battery主要部材

本研究は、高いイオン伝導性、優れた大気安定性、および低コストで有望なNASICON型固体電解質であるLATP (Li1.3Al0.3Ti1.7(PO4)3) の実用化を阻む主要な課題(リチウム金属との界面でのTi(IV)のTi(III)への還元、および高い粒界抵抗)を克服するために、内部と外部からの二重改質戦略を提案しています。


🔑 内部改質: LATP本体の構造最適化

1. ジュール加熱超高速焼結の適用

  • 目的: 従来の焼結法で発生していたリチウム揮発、粒子の粗大化、および高い粒界抵抗を抑制し、LATP本体の構造を最適化すること。
  • 方法: ジュール加熱超高速高温焼結を用いてLATP粉末を処理しました(LATP-J)。
  • 効果:
    • 高密度化: LATPを効果的に高密度化します。
    • 粒界抵抗の低減: 粒界の不純物凝集が減少し、粒界が不明瞭になることで、粒界抵抗が大幅に低下し、リチウムイオン輸送が促進されます。
    • 均一な微細構造: 従来のLATPに比べ、より小さく均一な粒子サイズ洗練された多孔質構造(比表面積の増大、平均細孔半径の減少)を実現しました。
    • Ti(IV)の安定化: 従来の焼結LATPで観察されたTi(IV)からTi(III)への部分的な還元が、ジュール加熱LATP-Jでは抑制され、LATPの活性相の安定性が維持されました。

2. 複合電解質膜の作製

  • LATP-J粉末をPVDF (ポリフッ化ビニリデン) マトリックスと溶液キャスティング法で複合化し、P-LATP-J膜を形成しました。
  • P-LATP-J膜は、PVDFと複合化されていないLATP膜と比較して、高い突刺強度(1.11 N)、高いヤング率(2.37 GPa)、および高い難燃性を示し、機械的・熱的堅牢性が向上しました。

🛡️ 外部改質: 安定な界面層の形成

1. PGPEゲルポリマー電解質層の導入

  • 目的: LATPとリチウム金属負極の直接接触を防止し、界面副反応を抑制すること。
  • 方法: PEGDA(ポリエチレングリコールジアクリレート)ベースのゲルポリマー電解質 (PGPE) を、LATP膜の表面に**その場架橋(in situ crosslinked)**重合により形成し、PGPE@P-LATP-J複合電解質としました。
  • 効果:
    • イオン伝導性: イオン伝導性を持ちながら、電子を絶縁する電子絶縁性を提供し、リチウムデンドライトの成長を物理的に抑制します。
    • 応力緩衝: リチウム金属に対する高い親和性優れた機械的支持力(ヤング率 1.2 MPa)を持ち、充放電時の体積変化による応力を緩和し、界面の剥離を防ぎます。
    • 均一なLi+堆積: 安定なPGPE層が均一なリチウムイオン(Li+)の堆積/剥離を促進し、デンドライトの形成を抑制します。

📊 複合電解質の優れた電気化学的特性

内部改質と外部改質を組み合わせた結果、PGPE@P-LATP-J複合電解質は以下の優れた性能を発揮しました。

項目比較対象との優位性
イオン伝導度(室温)1.14 ✕ 10^-3 S/cm従来のLATP膜 (P-LATP10) や外部改質のみの複合体 (PGPE@P-LATP10) よりも高い。
Li+ 輸率 0.79高いLi+輸率は、Li+が優先的にキャリアとして機能し、濃度の分極を抑制することを示す。
電気化学的安定性窓4.91 V高電圧正極にも対応できる広い安定性窓。
Li/Li対称セル安定性0.5 mA cm-2 で 1500時間超の安定動作従来のLATPや外部改質のみのシステムを大幅に上回る長期安定性。

🔋 全固体電池の性能評価

最適化されたPGPE@P-LATP-Jを固体電解質として用いた全固体リチウム電池は、優れた性能を示しました。

1. LCO(LiCoO2)正極を用いたセル

  • レート特性: 高レート(2C)での容量利用率が、他のセル構成と比較して優れており、イオン輸送と界面安定性の改善を裏付けています。
  • サイクル安定性: 1Cレートで200サイクル後、**93.8%**の高い容量保持率を達成し、高電圧正極との優れた適合性を示しました。

2. LFP(LiFePO4)正極を用いたセル

  • サイクル安定性: 1Cレートで200サイクル後、**99.1%**という非常に高い初期容量保持率を達成しました。

3. 界面安定性の直接的な証拠

  • サイクル後の電解質膜の分析(XRD)から、PGPE@P-LATP-Jを使用したセルでは、LATPのリチウム化相(Lithiated LATP)が検出されず、界面副反応が極めて効果的に抑制されていることが確認されました。

結論と展望

本研究で採用された内部(ジュール加熱焼結)-外部(PGPEゲル層)の二重改質戦略は、LATPの粒界抵抗の低減リチウム金属との界面安定性の両立という、NASICON系固体電解質の実用化における二大課題を同時に解決する実現可能で拡張性の高い戦略を提供しました。これにより、高性能かつ長期信頼性を有する全固体リチウム電池の開発が大きく前進しました。

出典:https://pubs.rsc.org/en/content/articlelanding/2025/eb/d5eb00166h

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