日本、テスラ、英国の ASSB 拡張に対する革新的なアプローチに焦点を当て、固体電池の世界的な進歩を探る。
はじめに:次世代バッテリーを巡る世界的な競争
シリーズのパート1では、全固体電池(ASSB)の大規模化に必要な課題とインフラについて深く考察しました。本稿、パート2では、いよいよ商業化に向けた世界的な競争の最前線に焦点を当てます。
特に、この革新的な分野でリーダーとしての地位を確立しようと野心的な取り組みを進める日本の動きから、垂直統合の巨像テスラの戦略、そしてユニークなアプローチを開発する英国の研究まで、固体電池の世界的な進歩を掘り下げます。果たして、次世代バッテリーの主導権を握るのはどの国、どの企業になるのでしょうか。
🇯🇵 日本:ASSB開発のグローバルリーダーを目指す
ASSBへの関心と開発が世界的に高まる中、日本は最も活発な動きを見せています。政府と産業界が一体となり、ASSBを「日本の技術革新の象徴」と位置づけています。
| 企業・機関 | 焦点となる取り組み | 商業化目標 |
| 日本政府 (経産省) | 22.4億ドルの予算計上(EVサプライチェーン強化) | 2030年頃の実用化 |
| トヨタ | 世界最多1,000件超のASSB関連特許を保有。パナソニック等と連携。 | 2028年までに量産導入 |
| 日産 | 横浜でパイロットライン建設を開始。DBE技術を活用(LiCAP Technologiesと提携)。 | 2028年までに搭載EVを発売 |
| ホンダ | 約2万平方メートルのASSB製造実証ラインを構築。 | 2020年代後半に搭載EVを生産 |
| 産業界 | パナソニック、出光興産、三井化学など、製造業各社が量産化に参画。 | 強固なサプライチェーンの早期構築を目指す |
自動車メーカー以外にも製造業大手が連携することで、日本はASSBの堅牢なサプライチェーンをいち早く構築できる可能性を秘めています。
🇬🇧 英国で登場:固体電解質繊維のスケーリングに関する興味深いアプローチ
固体電解質の形成には薄膜堆積が最も一般的ですが、英国では**「繊維」**という革新的なアプローチが登場しました。
- 革新性: 固体電解質をリチウムアルミニウムチタンリン酸塩(LATP)ファイバーで構成。これにより、伝導経路が長くなり、デンドライトの成長抑制と導電性向上が期待されます。
- スケーラビリティ: モルガン・アドバンスト・マテリアルズとサウサンプトン大学の共同研究により、LATPファイバーが開発されました。この材料は水系製造環境に適合し、既存のフォトニックファイバー製造技術を活用することで、数百万キロメートル単位での大量生産が可能であり、その拡張性が注目されています。
- 展望: 技術成熟度はまだ低いものの、その製造手法の拡張性の高さから、今後数年間で経済的に実行可能な代替アプローチとなる可能性を秘めています。
🇺🇸 テスラ:垂直統合戦略はASSBにも適用できるか?
ASSBメーカーであるMaxwell Technologiesを買収して以来、テスラがASSB開発に関心を寄せていることは周知の事実です。最大の疑問は、テスラの代名詞とも言える垂直統合戦略を次世代ASSBに適用できるかどうかです。
テスラは現行EVのサプライチェーンの約80%を掌握し、バッテリー生産を内製化しています。この強みがASSB生産において大きなアドバンテージとなる可能性があります。
- 内製化の強み:
- コスト優位性: 大規模な経済規模による材料の安価な調達と、垂直統合による従来のサプライチェーンにおけるマークアップの回避は、ASSB生産の最大の障壁であるコスト課題を解決する鍵となります。
- 技術転用: Maxwell Technologiesから得たDBE技術をASSBに適用することで、さらなるコスト削減と性能向上を見込んでいます。
- 柔軟性: サプライチェーン全体を網羅しているため、バッテリー部品を交換しても、他の垂直統合要素(原材料調達を除く)はほぼ維持でき、スムーズな移行が可能です。
現段階では、テスラが既存のリチウムイオン技術の向上とASSB開発のどちらに重点的にリソースを投じるかは明らかではありません。しかし、もしテスラが全面的にASSBに投資する決断を下した場合、その強固な社内生産能力とサプライチェーンネットワークにより、他社よりもはるかに低コストでASSBを生産し、市場を破壊する潜在力を持っていると言えるでしょう。
結論:ASSB競争の行方
ASSB開発を巡る競争は白熱しており、リーダーシップを握るのは日本か、テスラか、あるいは全く新しい企業か、多くのことがまだ不確実です。規模拡大には依然として経済的・技術的な障壁が存在しますが、この分野への関心と投資は明らかです。
複数の企業が掲げる大まかなタイムラインに基づけば、今後数年間でより多くのASSBが消費者市場に投入されることを期待できます。次世代バッテリーが自動車産業とエネルギー貯蔵に革命をもたらす瞬間が、刻一刻と近づいています。


コメント