多角経営のグローバルメーカーである旭化成(日本)と電池メーカーのEASバッテリーズ社(ドイツ)は、旭化成独自の新規電解質技術を用いて、超高出力リチウムイオン電池セルを共同開発し、市場投入に向けてライセンス契約を締結しました。
1. 新規電解質技術とセルの特徴
| 項目 | 詳細 | 補足情報 |
| 技術提供元 | 旭化成 | 30年以上のリチウムイオンセル研究開発の専門知識を活用。 |
| 技術内容 | アセトニトリル含有電解液技術(高イオン伝導性電解液) | 2010年に開発着手。ノーベル賞受賞者の吉野彰氏がアセトニトリルに注目。 |
| 採用セル | EASの新型超高出力リチウムイオンセル「UHP601300 LFP 22」 | 円筒形、容量22Ah。 |
| 正極材 | リン酸鉄リチウム(LFP) | コストや安全性に優れるLFPの弱点(低温での出力低下など)を電解液で補強。 |
| 市場投入予定 | 遅くとも2026年3月まで | 旭化成の商業化計画に沿う。 |
| 開発支援 | ドイツ連邦研究技術宇宙省の「HEADLINE」プロジェクトからの財政支援。 | 旭化成とEASの共同研究に基づく。 |
2. 性能比較(従来品との比較)
旭化成の新規電解液を使用することで、従来の電解質を使用したセルと比較して大幅な性能向上が確認されています。
| 項目 | UHP-601300-LFP-22 (旭化成電解液使用) | 従来の電解質を使用したセル | 向上率(概算) |
| 連続放電 | 2,550 W/kg(880 A、40℃) | 1,550 W/kg(550 A、25℃) | 約 +60% の比出力向上 |
| パルス放電(2秒) | 3,760 W/kg(1,320 A、60℃) | 3,420 W/kg(1,320 A、60℃) | 約 +10% の出力向上 |
| サイクル寿命 | 2,400サイクル(室温、5C/5C、100%DoDで初期容量の80%に達するまで) | – | – |
| 充放電特性 | 低内部抵抗により、サイクル中の発熱が少なく、エネルギー効率が向上。 | – | – |
*新規電解液の高いイオン伝導性が、厳しい温度条件下でもセル内部抵抗を低減し、優れたレート特性を実現します。
3. ターゲット用途と今後の展開
- ターゲット用途:
- 船舶、鉄道、建設機械といった要求の厳しい用途。
- モビリティ、産業、航空宇宙分野の厳格な要件を満たす設計。
- 今後の展開:
- 両社は、この統合技術を世界のOEMおよびバッテリーメーカーにサブライセンス供与することで合意。
- モビリティ用途への拡大を目指す。
4. 旭化成の「技術価値事業創造(TBC)」
今回のライセンス供与は、旭化成の**中期経営計画(MTP)**の戦略の一つである「技術価値事業創造(TBC)」を体現するものです。
- 目的: 特許、ノウハウ、データなどの無形資産を、提供やライセンス供与を通じて収益化すること。
- 効果: スピードとアセットライト(軽資産)を両立した事業化、新規事業創出の加速、顧客・パートナーへの価値最大化。
- 目標: 2025年度から2027年度にかけて10件以上の新規ライセンス契約を締結し、2030年頃までに累計100億円以上の利益貢献を目指す。


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