バッテリーおよびスーパーキャパシタ製造向けの装置プロバイダーであるSakuu®は、同社の積層造形プラットフォーム「Kavian®」を用いて完全乾式プロセスで製造されたカソード(正極)が、驚異的なサイクル寿命を達成したとする性能データを発表しました。
この成果は、電気自動車(EV)などの大容量エネルギー貯蔵システムにおけるバッテリーの実用性と持続可能性を大きく前進させるものです。
🔋 画期的な性能データ
Sakuu Kavianプラットフォームで、既存の化学材料を用いてドライプリントされたバッテリーセルが、業界のベンチマークを大きく上回る性能を実証しました。
| テスト項目 | 詳細 | 成果の意義 |
| バッテリーセル | 1Ahセル、グラファイト陽極 | 標準的なセル仕様で検証 |
| カソード材料 | NCM811(ニッケル・コバルト・マンガン) | 高エネルギー密度系の主流材料 |
| 製造プロセス | 完全に乾式印刷(ドライプリント) | 従来のリチウムイオン電池製造の主流である湿式プロセスを排除 |
| サイクル寿命 | 4,000サイクル後 | EV実用性の最低基準(2,000サイクル以上)を大幅に超過 |
| 充電維持率 | **83%**の充電状態(SoH: State of Health)を維持 | 一般的なEVバッテリーの寿命基準(80%以上)を満たす |
Sakuuの創業者兼CEOのロバート・バゲリ氏は、「Kavianの乾式製造プロセスは、現在の湿式プロセスの能力を満たすか、それを上回る製品を提供できることを確認した」と述べ、乾式プロセスによる電極印刷の適合性に関する疑念を払拭したと強調しています。
🏭 乾式プロセス製造の革新性
Kavianプラットフォームによる乾式プロセスは、単にサイクル寿命を向上させるだけでなく、従来の**湿式コーティング(溶剤を使用)**による電極製造が抱える多くの課題を解決し、バッテリー製造業界に劇的なメリットをもたらします。
| 課題分野 | 従来の湿式プロセス | Sakuu Kavian 乾式プロセス |
| 環境と安全性 | 有毒な溶剤を使用 | 有毒溶剤と水を100%除去 |
| コストと効率 | 大規模な乾燥工程とユーティリティが必要 | 製造フロアスペースを60%削減 |
| 公共事業コスト | 高い | 30%削減 |
| 資本設備コスト | 高い | 20%削減 |
| 持続可能性 | 高いエネルギー消費とCO2排出 | CO2排出量を55%削減 |
このプラットフォームは、現在NCA、NCM、LFP、LTOなどの既存の化学物質に加え、アルミニウムイオンやナトリウムイオンなどの新しい化学物質、さらには固体製剤にも対応できる柔軟性を持っています。
💡 関連技術と今後の展望
- 積層造形(AM)技術の応用: SakuuのKavianは、バッテリーセル部品を「レイヤーオンレイヤー」方式ではない独自のマルチマテリアル/マルチレイヤー手法でパラレルかつ乾式でプリントする、初の商業規模のソリューションです。これにより、従来の製造法では困難だった高品質、カスタマイズ性、量産性が実現します。
- スーパーキャパシタへの応用: Kavianプラットフォームは、需要が急増しているAIデータセンターの電力ニーズに対応するため、スーパーキャパシタ電極の乾式印刷も可能であり、バッテリー製造と同様のメリット(持続可能性、コスト削減)が適用されます。
- 業界の動向: 乾式プロセスによる電極製造は、リチウムイオン電池のコストと環境負荷を低減するゲームチェンジャーとして広く注目されています。特に、テスラなどが取り組んでいる技術でもありますが、Sakuuは積層造形技術を組み合わせることで、電極構造の最適化と製造効率の向上という独自の優位性を追求しています。
Sakuuは現在、Kavianの最初の受注に対応しており、顧客に高品質の乾式電極を納品している段階です。この技術は、将来的なEV、エネルギー貯蔵、さらにはAIデータセンター向けの電力供給において、製造業の変革をもたらす可能性を秘めています。


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