欧州連合(EU)が資金提供する研究プロジェクト「STELLAR」が2025年6月に正式に開始されました。この4年間のプロジェクトは、「第4b/4c/5世代バッテリー向け信頼性の高いリチウム金属アノードの安全、持続可能、かつ高スループット生産」を目指し、リチウム金属アノード箔の製造のための革新的なロールツーロール試験施設の開発に焦点を当てています。
🔋 リチウム金属バッテリーが「未来の技術」である理由
現在主流のリチウムイオン電池が物理的・技術的な限界に近づく中、リチウム金属電池が次世代のエネルギー貯蔵デバイスとして特に有望視されています。
| 特徴 | リチウム金属電池(次世代) | リチウムイオン電池(現行) |
| エネルギー密度 | 著しく高い | 限界に近づいている |
| メリット | 同じ重量でより多くのエネルギーを貯蔵、動作時間が長い | 標準的 |
| 応用分野 | 電気自動車(EV)、ポータブル電子機器など | – |
【課題】
リチウム金属は非常に反応性が高く敏感であるため、アノード(負極)を安全かつ再現性のある方法で製造することが大きな課題となっています。
⚙️ STELLARプロジェクトの目標と技術的挑戦
STELLARプロジェクトは、この製造上の課題を克服し、高性能なリチウム金属アノードの量産技術を確立することを目的としています。
1. ロールツーロール製造施設の開発
- 技術: 箔を連続的に巻き出し、加工し、巻き戻す「ロールツーロール」生産方式を採用します。これは、バッテリーのような大面積でフレキシブルな製品の費用対効果の高い製造に不可欠です。
- 生産能力目標: 年間約60キロメートルのアノード箔を生産できる工業生産能力を達成することを目指します。
- 精度目標: リチウム層の厚さを5~15マイクロメートルの範囲で正確に確保します。
2. 真空下でのインライン品質管理
- 製造環境: 非常に薄いリチウム層を、ウエハーレベルの薄さの銅箔に、特に複雑な真空チャンバー内で塗布します。
- 技術的貢献(フラウンホーファーITWM): フラウンホーファー産業数学研究所(ITWM)は、光学計測の専門知識を活かし、製造プロセスにおけるフィルム特性のインラインモニタリング技術を開発します。
- 主要なインライン監視パラメータ:
- 層厚(リチウム層の厚さ)
- 表面粗さ
- 電気伝導率
- 切断面品質
🤝 プロジェクト体制と資金調達
| 項目 | 詳細 |
| プロジェクト期間 | 2025年6月1日~2029年5月31日(4年間) |
| 主導企業 | ベルギーのAvesta Holding社(リチウム電池の開発・製造会社) |
| 参加パートナー | フラウンホーファーITWMを含む16の欧州パートナー |
| 資金総額 | 欧州委員会より総額790万ユーロ |
| フラウンホーファーITWMの資金 | 約75万7,000ユーロ(光学測定技術の開発向け) |
💡 関連情報(リチウム金属電池と世代区分)
- 第4世代/第5世代バッテリー: バッテリー技術の進化は世代で分類されることがあり、リチウム金属電池は通常、現行のリチウムイオン電池(第2世代)や全固体電池(第4世代の一部/第5世代)の後継または並行技術として位置づけられます。特に「第4b/4c/5世代」という言及は、液系電解質または半固体/準固体電解質(第4世代)、あるいは全固体電解質(第5世代)と組み合わせることを想定した、高性能アノード技術としての重要性を示唆しています。
- 気候目標への貢献: 効率的なバッテリー技術の開発は、各国の気候目標達成やカーボンニュートラル社会の実現に向けた、電動化戦略において極めて重要な要素です。
このプロジェクトは、欧州が将来のEVやエネルギー貯蔵市場における競争力を確保するために、高性能なリチウム金属バッテリーのサプライチェーン確立を目指していることを明確に示しています。


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