リチウム再高騰の2026年、ナトリウムイオン電池が「第3の選択肢」として世界市場へ進出

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電気自動車(EV)や蓄電システムの心臓部であるリチウムの価格が、2026年初頭に2年ぶりの高値を記録する中、次世代電池の本命とされる「ナトリウムイオン電池」が、ついに研究室から世界の供給網へとその舞台を移した。

今週、大西洋を挟んだ米国と欧州のバッテリー・イノベーターたちが、相次いで歴史的なマイルストーンを発表した。米国のUnigrid(ユニグリッド)による初の商業規模国際出荷と、欧州におけるAltris(アルトリス)とDraslovka(ドラスロフカ)の戦略的提携。これらは、リチウム依存からの脱却と、より安価で持続可能なエネルギー貯蔵の実現に向けた決定的な一歩となる。


1. 米国:Unigridが切り拓く「ファウンドリー型」輸出モデル

カリフォルニア州サンディエゴに本社を置く新興企業Unigridは、独自のNCO(ナトリウム・クロム酸化物)技術を用いた電池セルの、初の商業規模国際出荷を開始したと発表した。

同社の最大の特徴は、自社工場を建設せず、既存の製造インフラを活用する「ファウンドリー・モデル」にある。

  • 迅速な拡張: アジアの既存工場を活用することで、巨額の設備投資を回避し、2025年の100MWhから2026年には1GWhへの急拡大を狙う。
  • 物流の壁を突破: 輸送認証「UN38.3」を取得。これまでリチウムイオン電池しか扱えなかった主要港に対し、新たな申告手続きを確立し、40フィートコンテナでの直接出荷を実現した。

「このマイルストーンは、安全で拡張性の高い技術を世界市場へ届ける道筋を示すものです」と、同社のダレン・HS・タンCEOは自信を覗かせる。

2. 欧州:域内完結型のサプライチェーン構築へ

一方、欧州ではスウェーデンのAltrisが、チェコの材料専門企業Draslovkaと強固な提携を結んだ。1,930万ユーロ(約31億円)規模のこの提携により、欧州初となる産業規模のナトリウムイオン正極材バリューチェーンが誕生する。

  • 生産拠点: チェコ共和国コリンにあるDraslovkaの既存工場を拡張。
  • 独自技術: プルシアンホワイト正極材を用い、エネルギー密度160Wh/kgという、リン酸鉄リチウム(LFP)電池に匹敵する性能を達成している。
  • 稼働時期: 2026年後半に生産開始予定。年間350トンの生産は、電池容量換算で約175MWhに相当する。

Altrisのクリステル・ベルクイストCEOは、「欧州はもはや他国で技術が成熟するのを待つ必要はない」と述べ、域内での産業化を強調した。

3. 市場の背景:期待と「生存競争」の現実

ナトリウムイオン電池への注目が再燃している背景には、原材料コストの圧倒的な低さがある。地政学的リスクを伴うリチウムに対し、ナトリウムは食塩などから容易に得られ、世界中に遍在しているからだ。

しかし、この市場は順風満帆ではない。かつて「米国で最も有望」と目されたNatron Energy(ナトロン・エナジー)が、2025年9月に破産申請を行うという衝撃的なニュースもあった。ギガファクトリー建設に向けた莫大な資金調達と、急激なスケールアップの難しさが浮き彫りとなっている。

【表】ナトリウムイオン電池の主な強み

特徴詳細
経済性リチウムを使用せず、原材料費を大幅に削減
安全性熱安定性が高く、発火・爆発のリスクが極めて低い
低温特性マイナス気温下でも高い出力を維持
持続可能性豊富に存在する材料を使用し、リサイクルも容易

結びに代えて:2026年は「真の社会実装」の年に

Unigridの国際出荷開始と、Altrisによる欧州生産網の確立は、ナトリウムイオン電池が「期待の代替技術」から「実効性のある商業製品」へと進化したことを意味している。

2026年、高騰するリチウム価格を背景に、これらの先駆者が市場のシェアをどこまで奪えるか。世界のエネルギー転換の成否を握る、重要な1年が幕を開けた。

出典:https://www.ess-news.com/2026/01/16/sodium-ion-batteries-unigrid-begins-commercial-scale-deliveries-altris-and-draslovka-partner-to-scale-europes-first-supply-chain/

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