韓国のバッテリー大手サムスンSDIは、ドイツのプレミアム自動車メーカーBMW、そして米国のバッテリー素材企業**ソリッドパワー(Solid Power)**との間で、次世代の「全固体電池(All-Solid-State Battery: ASSB)」の開発・実証に向けた3者業務協約を締結しました。
この「三角同盟」は、バッテリーバリューチェーンの主要プレイヤーが協力し、全固体電池の商用化という技術的・費用的な障壁を乗り越えることを目指す、グローバルな協業事例となります。
🤝 3社協業の役割分担
この戦略的な協力体制では、各社がそれぞれの強みを活かして全固体電池の実用化を加速させます。
| 企業名 | 分野 | 役割 |
| ソリッドパワー | 素材(固体電解質) | 全固体電池の原材料となる硫化物系固体電解質をサムスンSDIに供給。 |
| サムスンSDI | バッテリーセル開発 | 固体電解質を活用し、エネルギー密度と安全性を高めた全固体バッテリーセルの設計・製造。2027年の量産開始を目指す。 |
| BMW | 車両への実証 | 開発されたセルを基に、バッテリーモジュール・パックを開発し、次世代テスト車両に搭載して実際の性能を検証。 |
サムスンSDIとBMWは、2009年にBMWの電気自動車バッテリー供給業者として選定されて以来、緊密な関係を維持しており、今回の協約で技術協力の強度がさらに高まりました。
🔋 全固体電池が「ゲームチェンジャー」と呼ばれる理由
全固体電池は、従来の液体電解質リチウムイオンバッテリーの最大の弱点を克服し、EV市場の構図を一変させる可能性を秘めています。
| 特徴 | 全固体電池(ASSB) | 従来のリチウムイオン電池 |
| 電解質 | 固体素材(ソリッドパワーは硫化物系) | 液体電解質 |
| 安全性 | 高い。電解液の液漏れによる発火の危険が小さい。 | 液体漏れ・発火のリスクあり |
| エネルギー密度 | 従来の60〜70%高くなる可能性 | 限界に近づいている |
| 構造・重量 | セル密閉が不要なため、軽量化・高効率化が可能 | 密閉が必要で重くなる |
サムスンSDIは、全固体電池により1回の充電で900〜1,000kmの長距離走行を可能にし、わずか9分での急速充電能力も目指しています。
💰 克服すべき課題:製造コスト
全固体電池の技術的な優位性は明らかですが、商用化にはコストの壁が存在します。
- 製造費用は液体基盤リチウムイオン製品より3〜5倍高い。
- 必要な施設費用もリチウムイオン電池に比べて10〜20倍多いと推算されています。
この「三角同盟」は、技術革新と規模の経済を通じて、これらの製造・費用障壁を乗り越え、実用的な価格帯での量産化を目指す戦略です。
🗓️ サムスンSDIのロードマップと市場見通し
サムスンSDIは、国内バッテリー3社の中で全固体開発速度が最も速く、すでに2023年に全固体モデルラインを構築し、試作品の生産とテストを開始しています。
- 量産目標時期: 2027年
- 市場拡大: EV向けだけでなく、高いエネルギー密度を要求するロボットなどの新規市場も開拓する計画です。
- 市場予測: グローバル全固体電池市場の規模は、2025年の1億4800万ドルから2030年には9億6300万ドルへと、5年間で約7倍近く急成長すると予測されています。
今回の協約は、技術面でリードするサムスンSDIとソリッドパワーの技術力、そしてBMWの車両への統合ノウハウが組み合わさることで、全固体電池の商業化を大きく加速させる重要な動きとなります。


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