中国の東風汽車はエネルギー密度 350 Wh/kg の固体電池を搭載した試作車両(プロトタイプ)を公開し、中国最北端の黒竜江省・漠河(モーハ)での冬季試験に向けて出発させました。これは同社が掲げる「2026年9月の量産開始」に向けた、最終段階の検証プロセスです。
1. 東風の固体電池がもたらす「3つの進化」
| 性能指標 | 詳細 | 従来比(LFP/三元系) |
| 航続距離 | 1,000km超 | 約1.5〜2倍。長距離移動の不安を解消。 |
| エネルギー密度 | 350 Wh/kg | 主流のLFP(140-160Wh/kg)の約2倍。 |
| 低温耐性 | -30℃で72%維持 | 液体電池は60%以下に低下。寒冷地での性能低下を克服。 |
2. なぜ「冬季試験」が重要なのか?
電気自動車(EV)にとって、冬の寒さは最大の弱点です。
- 液体電解質の限界: 従来のバッテリーは低温で液体電解質が粘り気を持ち、イオンの移動が妨げられます。その結果、航続距離が大幅に短縮し、充電時間も長くなります。
- 固体電池の優位性: 東風の固体電池は酸化物ポリマー複合固体電解質を採用しており、-40℃から-30℃の極寒環境下でも安定したイオン伝導性を維持します。今回の試験では、雪道での充放電効率や構造的な安全性を70以上の項目で検証します。
🏁 中国メーカー間の「固体電池」開発競争
東風汽車だけでなく、中国の主要自動車メーカーが2026年〜2027年をターゲットに激しい開発競争を繰り広げています。
- 紅旗(FAW Hongqi): 2026年1月、全固体電池を搭載した初の試作車「天工06(Tiangong 06)」を発表。硫化物系電解質を採用し、同じく実車テスト段階に入っています。
- 広汽集団(GAC):2,026年に小規模な実車試験を開始し、2027年の量産を目指しています。
- CATL & BYD: 世界最大の電池メーカー各社も2027年までの小規模搭載を計画しており、業界全体が「液体から固体へ」の転換点にあります。
🔍 補足:全固体か、半固体か?
ニュースでは「固体電池」と呼ばれていますが、厳密には2つの段階があります。
- 半固体電池(Semi-Solid State): 少量の液体電解質を含み、既存の製造ラインを流用できる。東風が今回量産を目指す 350 Wh/kg モデルはこの「半固体」の可能性が高いと業界では見られています(第1世代)。
- 全固体電池(All-Solid State): 液体を完全に排除。東風は第2世代としてエネルギー密度 500 Wh/kg の硫化物系全固体電池の研究も並行して進めています。
💡 まとめ:2026年は「固体電池EV」の元年になるか
東風汽車が予定通り2026年9月に量産を開始すれば、EV市場のルールが大きく変わる可能性があります。特に、これまでEVの普及が難しかった寒冷地(北欧、カナダ、北海道、中国北部など)において、固体電池は決定的なソリューションとなるでしょう。
今後の注目点: > 漠河での試験結果が公表される数週間後、極寒環境でどれほど「1,000km走行」という主張に近い数値を維持できるかに注目が集まります。


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