室温動作と3.6Vの高電圧を実現。ナトリウム硫黄電池の弱点を克服したブレイクスルー

Battery主要部材

2026年1月、学術誌『Nature』にて発表されたこの技術は、従来のリチウムイオン電池(LiB)が抱える「高コスト」「資源枯渇」「発火リスク」という3大課題を解決する可能性を秘めています。

主な性能指標

  • エネルギー密度: 最大 2,021 Wh/kg(LiBの約7倍以上)
  • コスト: 約 5ドル / kWh(LiBの約20分の1)
  • パワー密度: 23,773 W/kg(高出力対応)
  • 安全性: 不燃性電解質による高い耐火性

3つの革新的ブレイクスルー

1. 反応経路の転換(S0/S4+ レドックス化学)

従来のNa-S電池は、硫黄が電子を受け取る「還元反応」のみを利用し、電圧は約1.6Vと低位でした。

新技術では、塩素とアルミニウムを電解質に加えることで、硫黄が電子を放出する「酸化反応」を引き出すことに成功しました。これにより、放電電圧が3.6Vへと倍増し、リチウムイオン電池と同等の高出力を実現しました。

2. 「アノードフリー」構造の採用

通常、負極(アノード)にはあらかじめ金属ナトリウムを配置する必要がありますが、本設計ではアルミニウム箔を使用します。充電時に初めてナトリウムが析出する仕組みのため、製造コストの削減とエネルギー密度の向上を同時に達成しました。

3. 魔法の触媒「NaDCA」

添加剤として「ナトリウムジシアナミド(NaDCA)」を採用。これが電池内部の反応をコントロールする指揮官の役割を果たし、室温での安定した動作と、高い可逆性(繰り返し充放電できる能力)を支えています。


関連補足:なぜこの技術が重要なのか?

資源の地政学的リスク回避

リチウムの埋蔵量は南米の「リチウム・トライアングル」などに偏在していますが、ナトリウムは塩湖や海水から無限に採取可能です。特定の国への資源依存を脱却できる点は、エネルギー安全保障において極めて重要です。

既存のNa-S電池との違い

特徴従来のNa-S電池新型Na-S電池 (2026)
動作温度約300度から350度の高温室温
電解質固体(ベータアルミナ)液体(不燃性クロロアルミン酸塩)
主な用途大規模電力貯蔵(定置型)EV、モバイル機器、電力貯蔵

実用化に向けた課題

非常に有望な技術ですが、以下の点が今後の焦点となります。

  1. 腐食性への対策: 使用されるクロロアルミン酸塩系電解質は腐食性が強いため、電池ケースや封止材に高い耐久性が求められます。
  2. 量産技術の確立: 実験室レベルの高性能を、安価に大量生産するプロセスの構築が必要です。
  3. 長期的な気密性: 空気中での安定性を維持するため、高度なパッケージング技術が不可欠です。

まとめ

この新型Na-S電池は、リチウムに代わる「安価で安全、かつ高性能」な次世代蓄電池の筆頭候補です。特に1kWhあたり約5ドルという圧倒的な低コストが実現すれば、電気自動車(EV)の価格破壊や、再生可能エネルギーの完全な普及を後押しするゲームチェンジャーとなるでしょう。

出典:https://xenospectrum.com/china-sodium-sulfur-battery-record-energy-density-2021wh/

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