ポルシェが出資するGroup14 Technologiesとニューヨークを拠点とするSionic Energyは、共同研究の結果、リチウムイオンバッテリーの主要構成要素であるシリコンアノード(負極)において画期的な概念実証を達成したと発表しました。この進歩は、電気自動車(EV)の航続距離を延ばし、充電時間を短縮し、製造コストと地政学的リスクを低減する可能性を秘めています。
シリコンアノードの重要性と実証成果
アノードは、充電時にリチウムイオンが蓄えられ、放電時に放出されるバッテリーの部品であり、セルのエネルギー密度と充電速度を決定づけます。
- グラファイトからの脱却: 現在主流のグラファイトアノードは、採掘に伴う汚染、高コスト、そして中国が世界の処理量の90%以上を占めるという地政学的リスクを抱えています。業界は長年、より高性能で軽量なシリコンを理想的な代替品として模索してきました。
- 共同研究の成果: 両社の共同研究では、100%シリコンカーボンアノードが、4アンペア時(Ah)、10 Ah、20 Ahのパウチセルで試験され、45℃(113°F)および60℃(140°F)の高温環境下でも安定した性能を維持できることが実証されました。
- エネルギー密度の向上: シリコンアノードを使用することで、バッテリーのエネルギー密度を最大400 Wh/kgまで高めることができると主張されています。これは、現在一般的な200~300 Wh/kgを大幅に上回ります。
- サイクル寿命と安定性: サイクル寿命は1,200サイクルを超えており、この技術は「市場投入可能な状態」にあると主張されています。シリコンの課題であった、電解質の膨潤やセルの膨張といった欠点については、Sionic独自のアノードバインダーと設計アーキテクチャによって解決されたとされています。
EV市場への影響と導入の容易さ
シリコンアノードは、バッテリーの重量とサイズを削減しつつ、エネルギー密度を高めるため、EVの性能を大幅に向上させることが期待されています。
- 充電速度と航続距離: Group14は、同社のアノードを用いることで、バッテリーは10分未満(サイズと用途による)で充電可能になり、従来のバッテリーパックと比較して55%多いエネルギーを供給できると主張しています。
- 「ドロップイン」方式: Group14とSionic Energyのシリコンアノードは、既存の製造ラインやセルに組み込み可能な**「ドロップイン」方式**であるため、バッテリーメーカーは製造工程を大幅に変更する必要がありません。
- 市場投入の計画: Sionic Energyは、来年にEV市場へ、2027年にはエネルギー貯蔵システムへ製品を投入する予定です。
既に先行する採用事例
シリコンアノード技術は、既に高性能な分野や一部の高級車で採用が進んでいます。
- 高性能車: Group14のシリコンアノード技術は、わずか1.5秒で時速60マイル(約96 km/h)まで加速するハイパーカー「マクマートリー・スピールリング」の100 kWhバッテリーパックに搭載されています。
- 高級EV: メルセデス・ベンツは2022年、EQテクノロジーを搭載したGクラスにGroup14の競合であるSilaのシリコンアノードを採用すると発表しました。これにより、従来のバッテリーパックと比較して最大40%高いエネルギー密度を実現し、116 kWhの使用可能容量でEPA航続距離239 マイル(約380 km)を達成しています。
- その他の分野: シリコンアノード電池は、既に中国の高級スマートフォンにも採用され、驚異的なバッテリー容量を実現しています。
General Motors(GM)などの大手自動車メーカーもシリコンアノードの開発を進めており、グラファイトフリー電池などの技術は、全固体電池技術が実用化されるまでの間、EVの性能を飛躍的に向上させる大きな改善点として注目されています。
出典:https://insideevs.com/news/781257/silicon-anode-breakthrough-group14-sionic-energy/


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