東京理科大、ナトリウムイオン電池の寿命を延ばす新構造を特定―スカンジウム添加で劣化を抑制

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東京理科大学の駒場真一教授らの研究チームは、低コストな次世代電池として注目される「ナトリウムイオン電池」において、正極材料の劣化を劇的に抑えるメカニズムを解明しました。

1. 解決すべき課題:ヤーン・テラー歪み

ナトリウムイオン電池の有力な正極材料である「層状マンガン酸ナトリウム(Na2/3MnO2)」には、以下の欠点がありました。

  • 構造的劣化: 充放電中にマンガンの酸化状態が変化することで、結晶格子が歪む「ヤーン・テラー歪み(Jahn-Teller distortion)」が発生。
  • 容量低下: この歪みが繰り返されることで結晶構造が崩れ、急速に電池容量が失われる。

2. 新たな手法:スカンジウム(Sc)のドーピング

研究チームは、マンガンの一部を少量のスカンジウム(Sc)で置き換える(置換する)手法を考案しました。

  • 選択的安定化: スカンジウム添加は、特に歪みが発生しやすい P’2型 と呼ばれる結晶構造の安定性を選択的に向上させました。
  • メカニズム: スカンジウムが格子を補強することで、マンガンの活性を妨げずに、構造全体の崩壊を抑制します。
  • 副次的なメリット: 結晶の粒子サイズを微細化し、電解液との不要な副反応を抑える「安定した界面(CEI)」を形成。耐湿性も向上しました。

3. 実験結果と性能

  • 最適組成: スカンジウム含有量 8% の材料が最高のパフォーマンスを記録。
  • 耐久性: フルセル試験において、300サイクル後も約60% の容量を維持(未添加のものより大幅に向上)。
  • 特異性: 他の元素(アルミニウムやイッテルビウムなど)では同様の効果は得られず、スカンジウム特有の性質であることが判明しました。

関連補足:ナトリウムイオン電池(NIB)を取り巻く背景

この研究がなぜ重要なのか、業界の動向を交えて解説します。

リチウムイオン電池との違い

  • 資源の豊富さ: リチウムは産出地が偏り価格も高騰していますが、ナトリウム(塩の主成分)は地球上にほぼ無限に存在します。
  • 低コスト: 材料費を大幅に抑えられるため、安価な小型EVや定置用蓄電池(家庭・工場用)としての普及が期待されています。

今後の展望と課題

  • スカンジウムのコスト: 論文著者も指摘している通り、スカンジウムは希少金属(レアアースの一種)であり、リチウムに代わる低コスト化を追求するNIBにおいて、その価格が大規模導入のハードルになる可能性があります。
  • 商用化への道: 今後は、スカンジウムと同等の安定化効果を持つ、より安価な代替元素の探索や、今回の知見を活かした構造設計が加速すると見られます。

出典:https://www.ess-news.com/2026/01/05/mitigating-sodium-ion-battery-degradation-through-scandium-doping/

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