NMCとLMFPの相乗効果:放電末期の電圧ドロップを克服する混合正極の新設計

Battery主要部材

本研究は、高ニッケル層状酸化物(NMC811)にNb(ニオブ)コーティングを施したものと、オリビン材料(LMFP)を組み合わせた混合正極について、その相乗効果と最適な運用条件を解明しました。

1. Nb(ニオブ)コーティングの重要な役割

層状酸化物であるNMC811の表面に0.5 mol%のNb(LiNbO3)コーティングを施すことで、単体および混合状態での性能を底上げしています。

  • 界面の保護と安定化: 高電圧動作時における電解液との寄生的な副反応を抑え、表面構造の再構築(劣化)を防ぎます。
  • イオン伝導性の向上: Nbコート層はリチウムイオン伝導を促進する性質があり、電荷移動の速度を速めます。
  • 電圧ヒステリシスの低減: 充放電時の電圧差(過電圧)を小さくし、エネルギー効率と構造安定性(H2-H3相転移の安定化)を向上させます。

2. 放電末期の弱点を克服する「酸化還元緩衝効果」

NMCとLMFPを混合することで、NMC単体では避けられない「放電末期の失速」をカバーするメカニズムが働きます。

  • NMCの弱点(インピーダンスの急増): NMC811は放電が進み、リチウムが材料内に満ちてくる低電圧域(Li/Li+比 3.6 V付近)に達すると、イオンの拡散速度が劇的に低下し、電気抵抗(インピーダンス)が急増します。これが急激な電圧ドロップを招き、放電を早期に終了させてしまいます。
  • LMFPによる補完メカニズム: LMFPに含まれる Fe 2+/3+(鉄)の酸化還元対は、NMCが苦手とする3.6 V以下の低電圧域でも高いリチウムイオン輸送速度を維持します。
  • 相乗効果: 放電末期にNMCの抵抗が上がると、並列的にLMFP側のFe反応が電流負荷を肩代わり(バッファー)します。これにより、高負荷時でも電圧が安定し、より多くのエネルギーを取り出すことが可能になります。

3. 混合比別の性能・コスト分析

LMFP (LiMn0.5 Fe0.5 PO4)の混合比(15%および30%)による実用性の違いを検証しました。

  • 85/15(バランス型): 高温(45度C)・高出力(1C以上)において、純粋なNMC811と同等のエネルギー密度を維持しつつ、単位エネルギーあたりのニッケルコストを13%削減できる、最も効率的な比率です。
  • 70/30(安全性・低コスト重視型): 低残量時の粘り強さは最強ですが、LMFPの密度の低さから体積エネルギー密度が低下します。また、高温下ではマンガン溶出による劣化が目立ち、エネルギーあたりのコスト効率は85/15に劣ります。

結論:次世代バッテリー設計への指針

本研究は、「NbコートでNMC自体の安定性を高めつつ、LMFPを混ぜることで放電末期の動力学的弱点を補完する」という多角的な設計の有効性を証明しました。

  • 最適解: LMFPの添加量を 15%前後(85/15比率) に設定し、高温・高負荷環境で作動させることで、高価なニッケル使用量を大幅に抑えながら、高ニッケル正極に匹敵する性能を引き出すことが可能です。
  • 意義: この設計思想は、過酷な使用環境での信頼性と低価格化が求められる次世代EV向けリチウムイオン電池の商用化に大きく貢献します。

出典:https://pubs.rsc.org/en/content/articlelanding/2025/eb/d5eb00132c

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