次世代電池(全固体電池)のリーダーであるFactorial Inc.(ファクタリアル)は、特別買収目的会社(SPAC)のCartesian Growth Corporation III(CGCT)との事業統合契約を締結しました。これにより、ファクタリアルは2026年半ばにNasdaq市場への上場を果たします(ティッカー:FAC)。
1. 取引の主要条件と財務規模
- 企業価値(時価総額): 合併前ベースで約 11億ドル(合併後のプロフォーマ株式価値は約 15億ドル)。
- 資金調達: PIPE(機関投資家による私募)を通じて 1億ドル の新規資本を確保。
- 信託資金: Cartesian IIIが保有する約 2億7,600万ドル の現金信託も活用可能。
2. ファクタリアルの技術的優位性
同社の全固体電池技術は、既存のリチウムイオン電池の限界を超える「安全性」「軽量化」「長航続距離」を実現しています。
- 実走行試験の結果: メルセデス・ベンツEQSを用いたテストで、1回の充電で 1,200km(745マイル) 以上の走行距離を実証。
- 独自技術: FEST (Factorial Electrolyte System Technology) と Solstice プラットフォームを採用。
- 製造互換性: 既存のリチウムイオン電池製造ラインを大幅に改造することなく、そのまま活用できる点が商用化に向けた大きな強みです。
3. 多角的な市場展開
今回の資金調達により、自動車産業以外の分野への拡大も加速させます。
- 主な用途: 電気自動車(EV)、防衛、航空宇宙(ドローン/UAV)、ロボット工学、産業用アプリケーション。
- 主要パートナー: メルセデス・ベンツ、ステランティス、ヒュンダイ、キアといった世界的大手メーカーと提携済み。
関連補足:全固体電池市場の現状と重要性
ファクタリアルが推進する「全固体電池」は、EV産業における「ゲームチェンジャー」と目されています。
なぜ「全固体電池」が注目されるのか?
- エネルギー密度の向上: 従来の電池に比べ、同じ重さでより多くの電力を蓄えられるため、航続距離が飛躍的に伸びます。
- 安全性の飛躍的な向上: 燃えやすい液体電解質の代わりに固体を用いるため、火災のリスクが極めて低くなります。
- 充電時間の短縮: 急速充電に強く、EV普及の最大の障壁である「充電待ち時間」の短縮が期待されます。
競争環境と背景
現在、トヨタ自動車や日産自動車などの日本勢、さらには中国のクアンタムスケープ(QuantumScape)やSESといったスタートアップが激しい開発競争を繰り広げています。 ファクタリアルが今回、SPAC上場という手段で巨額の資金と高い知名度を確保したことは、プロトタイプから「量産フェーズ」へと移行する準備が整ったことを示唆しています。


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