中国政府は2026年1月1日付で、リチウムイオン電池のスクラップから成る「ブラックマス(Black Mass)」の輸入関税を従来の 6.5% から 3% へと大幅に引き下げました。
1. 政策の主な目的
- リサイクル産業の支援: 過剰設備を抱え、稼働率が低下している国内のリサイクル業者に対し、安価な原料供給を促す。
- 資源安全保障の強化: リチウム、コバルト、ニッケルなどの重要鉱物をスクラップから回収することで、海外の採掘資源への依存度を低減する。
- 規制緩和の継続: 2025年8月に実施された「一定基準を満たす電池スクラップの輸入解禁」に続く、市場活性化のための追加措置。
2. 「ブラックマス」とは何か
ブラックマスは、使用済み電気自動車(EV)用バッテリーや工場の製造廃材を物理的に破砕・選別して得られる黒い粉末状の中間原料です。
| 含有される主な金属 | 用途 |
| リチウム (Lithium) | 電池の正極材などの主原料 |
| ニッケル (Nickel) | 高エネルギー密度電池の材料 |
| コバルト (Cobalt) | 電池の安定性を高める希少金属 |
3. 市場の反応と課題
専門家からは、今回の措置について以下の冷静な分析も出ています。
- 地域的な限定性: 韓国や東南アジア諸国には既に低関税が適用されているため、恩恵を受けるのは主に欧米からの直接輸入を行う業者に限られる。
- 厳しい環境基準(フッ化物制限): 中国が設定している「水溶性フッ化物含有量」などの環境基準は極めて厳格です。世界市場に流通するブラックマスの多くがこの基準をクリアできておらず、関税引き下げ後も実際の輸入量が劇的に増えるかは不透明です。
関連補足:なぜ中国はリサイクルを急ぐのか
中国は世界最大のEV市場であり、初期に普及した車両のバッテリーが「大量廃棄期」を迎えています。
- 都市鉱山の活用: 採掘コストの上昇や地政学的リスクを背景に、廃棄バッテリーを「都市鉱山」として活用する動きが加速しています。
- 世界シェアの維持: 中国はブラックマスの処理能力で世界トップを走っていますが、欧州の「バッテリー規則(再生材料の使用義務付け)」などの国際規制に対応するため、よりクリーンで効率的なリサイクルチェーンの構築を急いでいます。
今回の関税引き下げは、単なるコスト削減ではなく、「世界のリサイクル原料を中国に集約させる」という戦略的な意図が見て取れます。
出典:https://www.bloomberg.com/jp/news/articles/2026-01-05/T87WBEKK3NYA00?srnd=jp-homepage


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