危険作業からの解放と生産性の劇的向上 ─ CATLの人型ロボット導入が示唆する製造業の転換点

Battery技術

世界最大の車載電池メーカーである CATL は、2025年12月、河南省洛陽市の製造工場において、ヒューマノイドロボット(人型ロボット)が主導するバッテリーパック生産ラインの稼働を開始しました。生産現場への人型ロボットの大規模導入は、バッテリー業界で世界初の試みです。

1. ロボット「Xiaomo(小桃)」の役割と性能

  • 担当工程: バッテリーパック出荷前の最終テスト工程(EOL:ライン終了試験およびDCR:直流内部抵抗測定)。
  • 作業内容: 数百ボルトの高電圧が流れるテストプラグを、バッテリーの接続部に正確に挿入・抜去する作業。
  • 実績: * 接続成功率:99% 以上。
    • 作業サイクル:熟練作業員と同等のスピード。
    • 作業量:手作業と比較して 3倍(複数モデルの連続生産に対応)。

2. 導入を可能にした最新技術

  • VLAモデルの搭載: 「Vision-Language-Action(視覚・言語・行動)」モデルを組み込み、周囲の環境を認識して自律的に判断。
  • 動的な調整: 部品の位置ズレがあってもリアルタイムで姿勢を修正し、配線ハーネスを傷つけないよう力を加減して接続します。
  • 自律検査: 業務の合間に自ら検査モードに切り替え、異常をリアルタイムで報告することで不良率を低減しています。

3. 開発背景とパートナーシップ

  • 開発元: CATLが支援するスタートアップ Spirit AI(2024年設立、杭州拠点)が開発。
  • 目的: 高電圧アーク放電のリスクを伴う危険作業から人間を解放し、品質の一貫性と生産効率を極限まで高めること。

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なぜ今、ヒューマノイドなのか

従来の産業用ロボット(アーム型)は、固定された作業には強いものの、配線ハーネスの接続のような「柔軟で複雑な動き」や「状況に応じた判断」が必要な作業には不向きでした。

  • 汎用性: 人間と同じ形状であるため、既存の工場設備(人間用に設計されたライン)を大幅に改造することなく導入できるメリットがあります。
  • 具現化された知能(Embodied AI): AIが物理的な体を持つことで、複雑な製造現場での学習と適応が可能になりました。

CATLの市場支配力と自動化戦略

CATLは現在、世界市場シェア 38.1%(2025年1月から10月実績)を誇る圧倒的リーダーです。

  • 生産能力: 同期間の設置量は 355.2 GWh(前年同期比 36.6% 増)。
  • 戦略的意義: 爆発的に増える需要に応えるため、単なる機械化ではなく、AIロボットによる「無人化・知能化工場」への転換を急いでいます。テスラ(Optimus)やBMW(Figure AI)など、自動車業界全体でも同様の動きが加速していますが、CATLは電池パック生産という極めて精密かつ危険な分野で先んじた形です。

用語・単位解説

  • GWh (Gigawatt-hour): 電池容量の単位。1GWhは一般的なEV約1万5000台分に相当。
  • EOL (End of Line): 製造ラインの最終工程で行われる検査。
  • DCR (Direct Current Internal Resistance): 直流内部抵抗。電池の出力性能や劣化状態を測る重要な指標。
  • VLAモデル: 視覚情報から次の行動を直接生成する最新のAIアーキテクチャ。

出典:https://cnevpost.com/2025/12/18/catl-launches-humanoid-robot-powered-battery-pack-line/

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