中国のEV最大手であるBYD(比亜迪)は、次世代バッテリー技術である**全固体電池(SSB)**を搭載した電気自動車(EV)を、2027年から市場に投入する計画を改めて公表しました。この動きは、EVの「安全性」「航続距離」「充電時間」というユーザーの三大懸念を一気に解消し、EV業界の勢力図を塗り替える可能性を秘めています。
1.全固体電池がもたらす革新とBYDの目標スペック
全固体電池は、従来の液系リチウムイオン電池と異なり液体電解質を使用しないため、安全性と性能において大きな優位性を持ちます。
| 特徴 | BYDの目標スペック | 従来からの優位性 | 関連情報 |
| エネルギー密度 | 400 Wh/kg(質量比) | 従来のLFPやNMCを大きく上回り、電池の軽量化・小型化に貢献。 | BYDは高ニッケル三元(単結晶)+シリコンベース負極+硫化物電解質を採用。セル容量60Ah超を目指す。 |
| 航続距離 | 800 km 超(将来的に 1,000 km クラスも視野) | エネルギー密度の向上により、長距離走行が可能になり、ユーザーの不安を解消。 | |
| 充電速度 | たった12分で満充電に近づく可能性 | 超高速充電が可能になり、ガソリン車並みの利便性を実現。 | |
| 安全性 | 非常に高い熱安定性 | 液漏れ・発火のリスクを低減。 |
2.導入スケジュールと戦略的展開フェーズ
BYDは、技術の成熟とコスト削減を見極めながら、段階的な導入戦略を採用しています。
| フェーズ | 期間 | 概要 |
| デモ導入/実証 | 2027年頃 | 限定モデルでの実証運用を開始。初期導入は主に上級モデル向けとなる見込み。 |
| 実用化試験 | 2027年〜2029年 | 市場・コスト・製造技術の成熟度を測りながら、技術の検証・最適化を行う期間。 |
| 量産・普及 | 2030年頃 | 本格的な量産体制に移行し、普及モデルへの展開も視野に入れる。 |
BYDのCTOは、2030年までに従来の液系リチウムイオン電池と同等のコストにまで引き下げる目標を掲げており、硫化物固体電解質のコスト削減や大規模生産による歩留まり向上を目指しています。
3.全固体電池開発における他社の動向(関連情報)
全固体電池は「EVのゲームチェンジャー」として世界中で開発競争が激化しており、BYDの2027年という目標は、主要なライバルメーカーと並ぶ、あるいは先行する挑戦的なスケジュールです。
- 日本勢(トヨタ、日産、ホンダ):
- トヨタは最も早くから開発を進めており、2027年~2028年の実用化を目指し、出光興産との協業による量産化計画を推進しています。
- 日産も2028年度までの実用化を目指し、パイロット生産ラインの構築を進めています。
- ホンダも2030年頃の実用化を目標としています。
- 中国勢:
- BYDのライバルである**CATL(寧徳時代)**も開発を積極的に進めており、競争は激化しています。ただし、市場に出回る「固体電池」の一部は、現状では真の全固体電池ではなく「半固体電池」である点に注意が必要です。
4.実用化に向けた課題
BYDが目標を達成するためには、以下の技術的・商業的な課題をクリアする必要があります。
- コストの低減: 精密な製造プロセスや材料により、現在の全固体電池のコストは従来型電池の約2倍とされており、量産による大幅なコスト削減が不可欠です。
- 技術的な難易度: 固体電解質と電極間の接触抵抗、低温環境下でのイオン伝導性の確保など、技術的なハードルが存在します。
- 量産体制とインフラ: 大規模な製造能力の確保に加え、超高速充電を可能にするインフラ(充電器、充電網)の整備も必要となります。


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