2025年12月1日に開催されたMITEI秋季コロキウムで、ゼネラルモーターズ(GM)のカート・ケルティ副社長は、アメリカがバッテリー技術のリーダーシップを確立するためには、手頃な価格、入手しやすさ、商業化という3つの課題を解決することが重要だと強調しました。
1. GMが推進するバッテリーイノベーションの3本柱
GMのバッテリー開発チームは、以下の3点に注力し、次世代技術の研究室から商業化への移行を加速させています。
| 重点分野 | 目的と課題 | GMの取り組み |
| 手頃な価格 | バッテリーが車両コストの約30%を占めるため、EV普及のためにコスト削減が必須。 | LMRバッテリーの開発・導入。 |
| 性能向上 | 充電速度やエネルギー密度の向上。 | LMRバッテリーによる長距離航続距離の維持。 |
| サプライチェーンのローカライズ | 中国からの材料供給への依存を減らし、北米の回復力と自立性を強化。 | 北米でのバッテリー製造と重要鉱物(リチウム、グラファイト、マンガン)の調達強化。 |
2. 画期的な技術:リチウムマンガンリッチ(LMR)バッテリー
ケルティ氏が「まさに画期的な点」として発表したのが、LMRバッテリーです。
- コスト削減: 高価なコバルトの使用を大幅に削減し、比較的安価なマンガンの含有量を増やします(ニッケル約35%、マンガン約65%)。
- 性能: 中国で主流の低コストなLFP(リン酸鉄リチウム)バッテリーと同等のコストでありながら、高ニッケル系バッテリーに近い動作範囲(航続距離)を実現します。報道によると、LFPバッテリーよりも33%高いエネルギー密度を同じコストで達成できるとされています。
- 商業化の進展: LMRは新しいコンセプトではないものの、GMは商品化の課題を解決し、2028年に自社のEVにLMRバッテリーを搭載して販売する最初のOEMとなる予定です。
3. イノベーションを支える技術と将来の展望
- AI/仮想化: 研究開発に**人工知能(AI)**を活用し、仮想モデリングによって、以前は数ヶ月かかっていた材料組成の変更による影響評価を数日に短縮。
- V2G(Vehicle-to-Grid): 双方向充電器を用いた双方向エネルギーフローに期待。EVを電力網に接続することで、電力料金が安い夜間に充電し、高い日中に放電することが可能になります。
- グリッドスケール貯蔵: 輸送部門だけでなく、バッテリーに関する専門知識をデータセンターの成長により急成長している電力網規模のエネルギー貯蔵分野にも応用することを模索しています。
関連情報(GMおよび米国バッテリー開発の動向)
- LMRバッテリーの共同開発と量産: LMRバッテリーは、GMと韓国の**LGエナジーソリューション(LGES)**が共同開発しており、合弁会社であるアルティウムセルズが2027年末までに試験生産、2028年までに米国での量産開始を目指しています。
- 国内サプライチェーン強化: GMは、米国の新興企業レッドウッド・マテリアルズと提携を拡大し、米国製電池を蓄電システムに供給するなど、バッテリーのリサイクルおよびサプライチェーン強化にも取り組んでいます。
- 他社の動向: EV競争のライバルであるフォードも、LMRバッテリー技術の開発を進めており、2030年までにより長距離・低価格のEV発売を計画しています。GMは市場投入で先行することを目指しています。
- 施設投資: GMはミシガン州に大規模な研究開発施設「ウォーレス・バッテリー・セル・イノベーションセンター」を建設するなど、バッテリーの研究開発に巨額の投資を続けています。
ケルティ氏は、アメリカには「実現に必要な技術があり、イノベーションを起こし、製造業の発展を目指す計り知れないチャンスがある」と述べ、巨大なバッテリー産業の構築に強い楽観的な見方を示しています。
出典:https://news.mit.edu/2025/driving-american-battery-innovation-forward-1201


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