CustomCellsは、2025年に入り完了した投資家コンソーシアムによる救済を受け、経営体制と事業ドメインを刷新しました。かつての「広範な電動化」から、**「ニッチかつ高付加価値な特殊市場」**へと舵を切っています。
1. 新経営体制と新たな重点分野
新CEOのBenno Leuthner氏とCTOのJan Diekmann氏のもと、以下の2分野にリソースを集中させます。
- 防衛(Defense): 軍事基準を満たす欧州製バッテリーの供給。
- モータースポーツ: F1やWEC(世界耐久選手権)の「ハイパーカー」クラス向け高性能セル。
- 撤退/縮小分野: 一般的な電気自動車(EV)向け、および航空機(エアタクシー)向けソリューション。
2. 戦略転換の背景:Liliumの破綻と連鎖
CustomCellsが苦境に陥った最大の要因は、主要顧客であった空飛ぶクルマ(eVTOL)スタートアップ、**Lilium(リリウム)**の経営破綻です。
- LiliumはCustomCellsにとって最大の受注先でしたが、資金繰りの悪化により破産。
- これによりCustomCellsも連鎖的に破産手続きを余儀なくされましたが、今回の再編で「特定の巨大顧客への依存」を避け、より堅実かつ高単価な防衛・レース分野へシフトしました。
【関連情報】CustomCellsを支える技術と市場の背景
再構築された戦略を理解する上で重要な補足情報を付け加えます。
A. 「技術主権」と脱中国サプライチェーン
現在、世界のバッテリー市場は中国企業(CATLやBYDなど)が圧倒的なシェアを握っています。しかし、防衛産業においては安全保障の観点から**「欧州域内での完結(技術主権)」**が強く求められています。
- CustomCellsは、中国に依存しないサプライチェーンを構築している数少ない欧州メーカーとしての地位を強調しており、これが投資家を惹きつける大きな要因となりました。
B. セルフォルス(Cellforce)との関係
CustomCellsは、ポルシェ(Porsche)との合弁会社Cellforce Groupを通じて、高性能なシリコン負極電池の開発に関わってきました。
- 今回の再編後も、こうした「高エネルギー密度」かつ「急速充放電」を可能にする特殊技術が、F1やハイパーカーのハイブリッドシステムに転用されます。
C. 特注(Customized)戦略への回帰
創業時(2012年)の志に立ち返り、大量生産(Mass Production)ではなく、**「動作条件に正確に適合するセル」**の受託開発に専念します。
- 軍用ドローン、潜水艇、過酷な環境下でのレース用車両など、標準的なリチウムイオン電池では対応できない領域が主戦場となります。
まとめ:新生CustomCellsの立ち位置
| 項目 | 旧戦略(破産前) | 新戦略(再構築後) |
| 主要顧客 | Lilium(エアタクシー)、ポルシェ | 防衛産業、F1/WECチーム |
| 生産モデル | 規模の拡大も視野 | 完全なオーダーメイド・高性能特化 |
| 強み | 革新的なセル設計 | 欧州内サプライチェーン、軍事規格対応 |
| 経営陣 | 創業者中心 | Benno Leuthner (CEO) 他 |
CPO Andreas Reeke氏のコメント要旨:
「当社の強みは特別なソリューションにある。より明確な焦点と迅速な対応、強固な組織体制で、顧客の個別のニーズに応えていく。」
今回の再編により、同社は「汎用バッテリーの競争」から脱却し、欧州の安全保障とモータースポーツの技術基盤を支える「ブティック型メーカー」としての生き残りを目指す形となります。
出典:https://batteryindustry.net/customcells-resets-strategy-following-insolvency/


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