2022年にアーヘン工科大学の研究者らによって設立されたcylib社は、ドイツ連邦経済エネルギー省(BMWK)より**6,340万ユーロ(約100億円)**の助成金を獲得しました。これにより、ドルマーゲン工場の建設を加速させます。
1. プロジェクトの主要ポイント
- 施設所在地: ドイツ、ノルトライン=ヴェストファーレン州ドルマーゲン(ケムパーク内)
- 稼働予定: 2027年
- 処理能力: 年間60,000トン(EV用バッテリー14万個分に相当)
- 当初計画の30,000トン(NMC:ニッケル・マンガン・コバルト系)に、今回の助成金で30,000トン分のLFP(リン酸鉄リチウム)専用ラインを追加し、容量を倍増させます。
- 高い回収率: 独自技術「OLiC」により、リチウムやグラファイトを含む原材料の90%以上を回収可能。
- 環境負荷の低減: 鉱山からの新規採掘と比較して、温室効果ガス(GHG)排出量を80%削減します。
2. 関連情報:なぜ「LFPリサイクル」が重要なのか?
- 市場のミスマッチ: 現在、世界のEVバッテリーの約50%が安価なLFP(リン酸鉄リチウム)ですが、リサイクル業者の多くは、高価なニッケルやコバルトを含むNMC電池の処理を優先してきました。LFPは「リサイクルの経済価値が低い」とされてきたため、欧州では専用の大型施設が不足しています。
- 中国への依存脱却: LFP技術は中国企業が圧倒的なシェアを持っており、原材料も中国に依存しています。欧州域内でLFPを再資源化することは、エネルギー安全保障の観点から極めて重要です。
- EU電池規則への適合: EUでは「電池規則(EU Battery Regulation)」により、リサイクル原材料の使用義務や回収率の目標が厳格化されています。cylib社の施設は、この規制をクリアするための戦略的拠点となります。
3. cylib社の独自技術「OLiC」
一般的なリサイクル(熱処理など)とは異なり、同社の技術は水系プロセスをベースにしています。
- リチウム・ファースト: プロセスの初期段階でリチウムを効率よく抽出できるのが特徴です。
- グラファイトの回収: 従来は焼却処分されることが多かったグラファイト(黒鉛)も回収対象としており、より完全な循環型経済(サーキュラーエコノミー)を目指しています。


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