1. 2025年米国自動車市場の販売予測と価格動向
市場の不確実性にもかかわらず、2025年の米国新車販売市場は停滞せず、予想に反して成長する見込みです。
- 販売予測: 市場調査会社コックス・オートモーティブは、2025年の米国新車販売台数が1,610万台に達すると予測しています。これは、2024年の実績(1,560万台から1,570万台)を上回る数字です。
- 価格動向: 2025年の新車平均販売価格は、前年比で3~4%上昇すると見込まれています。
- 主な要因: 大型SUV、高級車、高価格帯の電気自動車(EV)への消費者の嗜好シフトが価格上昇を牽引しています。
- 懸念事項:
- 関税による価格上昇: 新車関税により、価格が2,000ドル以上上昇する懸念。
- EV税制優遇措置の終了: バイデン政権時代のEV購入に対する税制優遇措置が2025年9月末で終了することにより、EV市場の成長が鈍化する可能性が指摘されています。
2. 主要自動車メーカーによる巨額の米国投資計画
「アメリカ第一主義」政策や国内回帰(リショアリング)の機運を受け、複数のOEM(自動車メーカー)が米国製造業への大規模な投資を発表しています。
| メーカー | 投資期間 | 投資総額 | 主な内容 | 関連情報 |
| トヨタ自動車 北米部門 | 今後5年間 | 最大 100億ドル(追加投資) | ノースカロライナ州に139億ドル規模の新規バッテリー工場を建設。2025年11月に稼働開始。 | EV補助金終了によるEV市場成長の鈍化が予想されており、工場の開設時期については最適なタイミングではないとの指摘もある。 |
| ステランティス | 今後4年間 | 約 130億ドル | 米国での生産能力を約50%拡大。イリノイ州ベルビディア工場の再開、中西部の工場でEV、ハイブリッド、内燃エンジンモデル、新しい4気筒エンジンプログラムをサポート。 | ダッジ、ジープといったブランドを持つステランティスの中西部への投資は、伝統的な「ラストベルト」地域(中西部から北東部の工業地帯)の雇用回復に期待がかかる。 |
| 現代自動車グループ | 2025年~2028年 | 約 210億ドル | 米国の軽自動車生産能力を年間約120万台に増強。アラバマ州とジョージア州の工場アップグレードに約90億ドルを含む。 | 現代自動車はジョージア州に大規模なEV専用工場(Hyundai Motor Group Metaplant America: HMMA)を建設中であり、この投資計画はその取り組みを補強するもの。 |
3. 熟練労働者に関する課題と移民規制
巨額の国内投資が進む一方で、EVサプライチェーンの構築に不可欠な熟練労働者の確保が深刻な課題となっています。
- スキルギャップの認識: ドナルド・トランプ氏も、EVサプライチェーンの構築に必要な専門スキルは国内では不足していると発言しており、「失業手当をもらっている人を工場に送り込んでもミサイルを製造させることはできない」と述べています。
- H-1Bビザ手数料の障壁: 2025年9月21日以降に提出される米国外の労働者に対する新しいH-1Bビザ(高度な専門知識を持つ外国人労働者向け)申請には、返金不可の10万ドルという高額な手数料が義務付けられました。
- 建設現場での摩擦:
- ジョージア州エラベルにあるヒュンダイ・モーター/LGエナジー・ソリューションズのバッテリー工場建設現場で、主に韓国人の労働者が不法就労の疑いで家宅捜索を受けました。
- 背景: 韓国政府は、米国でハイテクバッテリー工場を期限内に稼働させるには、H-1Bなどの就労ビザを十分な数取得することがほぼ不可能であると主張しています。
- グレーゾーンの慣行: 厳しい建設期限を守るため、下請け業者はビザ免除プログラムやB-1/B-2ビジネス訪問者ビザ(通常は建設・生産現場での作業は不許可)を利用して労働者を連れてきており、これが移民規制と建設スピードのジレンマを生んでいます。
4. 2025年の市場のボラティリティ(不安定性)
2025年は、複数の要因が絡み合い、市場のボラティリティが高い年として推移しました。
- 関税: 不明確な免除を伴う関税の断続的な導入。
- 補助金: EV補助金の廃止。
- 投資: 複数のOEMによる前向きな投資発表。
- 労働力: 自動車労働力への外国人専門家の配置に関する不透明さ。
これらの要因が複合的に作用し、米国自動車産業は大きな変革期を迎えています。


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