ミッドスウェーデン大学FSCNリサーチセンターの博士課程学生、アリ・アボ・ハマド氏の研究により、リチウムイオン電池の負極(アノード)にシリコンを組み込む際の主要な課題を解決する、持続可能で低コストな製造方法が開発されました。
この新しい「グリーン熱化学修飾」プロセスによって製造されたシリコン微粒子を使用することで、電池のエネルギー貯蔵量を2倍から3倍に増やす可能性が示されました。
📝 研究の概要と革新性
| 項目 | 詳細 |
| 研究機関 | ミッドスウェーデン大学 FSCNリサーチセンター |
| 研究者 | アリ・アボ・ハマド氏(博士課程学生) |
| 従来の課題 | シリコンはグラファイトの最大10倍の電荷を蓄えられるが、充放電サイクル中にひび割れや破損が生じ、急速に性能が低下する(体積変化が大きいため)。 |
| 開発技術 | シリコン粒子を多孔質化し、膨張・収縮のストレスを吸収できるようにする。 |
| 革新のポイント | 従来の有害な酸(フッ化水素など)を使用せず、**一般的な肥料である「尿素(Urea)」**を代わりに使用。シリコンと共に加熱することで、尿素が分解してガスとなり、シリコン表面をエッチングして多孔質構造を形成する。 |
| 利点 | シンプル、低コスト、安全で環境に優しいプロセス。 |
📈 性能向上と将来の展望
- 電極構成: 多孔質化されたシリコンをグラファイトと混合して複合電極を形成。
- 容量増加: 多孔質シリコンをわずか10~20%含む電極は、純粋なグラファイト電極と比較して2~3倍の容量を発揮。
- 安定性: 未処理のシリコンで問題となる急速な性能低下(安定性の問題)を解決し、はるかに高い安定性を維持。
- 長期目標: 長期的な目標として、多孔性の安定性への影響を深く理解し、最終的にはグラファイトを完全にシリコンに置き換えることを目指しています。
🌐 関連情報:シリコン負極(Silicon Anode)の重要性
本研究は、リチウムイオン電池の性能を根本的に引き上げるための、最も注目されている分野の一つです。
- 現状の課題: 現在主流のリチウムイオン電池の負極には**グラファイト(黒鉛)**が使用されていますが、エネルギー容量には理論的な限界があります(約372 mAh/g)。
- シリコンの優位性: シリコンの理論容量はグラファイトの約10倍(約4200 mAh/g)。これを電池に導入できれば、電池のサイズや重量を変えずに、電気自動車の航続距離を伸ばしたり、電子機器の駆動時間を大幅に延ばしたりすることが可能です。
- 技術の進化: シリコン負極の実用化に向けた研究は世界中で進められており、多孔質化のほかにも、シリコンをナノワイヤーやナノ粒子にする、あるいはカーボン材料でコーティングするなどのアプローチが研究されています。
- 本研究の意義: 特に、本研究で開発された「尿素を用いるグリーンな製造プロセス」は、コストと環境負荷を大幅に下げ、シリコン負極の大量生産と商業化を加速させる上で非常に重要な意味を持ちます。
出典:https://techxplore.com/news/2025-11-silicon-power-generation-lithiumion-batteries.html


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