蔚山科学技術院(UNIST)の研究チームは、全固体電池の主要コンポーネントであるポリマー電解質の性能を向上させる、シンプルかつ効果的な新しい手法を開発しました。
電解質の**フィルムを一方向に物理的に引き伸ばす(一軸延伸する)**というプロセスにより、リチウムイオンの移動度が大幅に改善され、電池の安全性と長寿命化が同時に達成されました。
📝 研究の概要と革新性
| 項目 | 詳細 |
| 研究機関 | 蔚山科学技術院(UNIST)エネルギー化学工学部(Seok Ju Kang教授ら)、淑明女子大学(Se Hun Joo教授) |
| 掲載誌 | Energy Storage Materials (2025) |
| 課題の背景 | 固体ポリマー電解質は、可燃性の液体電解質に比べて安全性が高い(火災・爆発リスクの低減)が、リチウムイオンの移動度が低く、充放電サイクル中の容量低下(寿命の短さ)が問題とされていた。 |
| 開発技術 | **フッ素化ポリマーベースのフィルム電解質(PVDF-TrFE-CFE)**に「一軸延伸プロセス」を適用。 |
| 革新のポイント | 物理的な伸張により、ポリマー鎖が一方向に整列し、リチウムイオンが移動するための連続的な経路が確保される。これにより、リチウムイオンの輸送能力が大幅に向上する。 |
| 複合材料 | 機械的柔軟性、難燃性、イオン伝導性をさらに高めるため、ポリマーマトリックスに**セラミック粉末(LLZTO)**を組み込んでいる。 |
📈 性能と安全性の向上
| 性能指標 | 結果 |
| リチウムイオン拡散速度 | 伸張していないサンプルに比べ、4.8倍増加 |
| イオン伝導性 | **72%**向上 |
| 電池寿命(サイクル維持率) | 200サイクル後も初期容量の**約78%**を維持(非伸張サンプルは55%) |
| 難燃性 | 点火後、わずか4秒以内に炎が消えることを確認 |
💡 商業化への影響と意義
- 課題解決のシンプルさ: 研究チームは、ポリマー電解質の固有の問題(イオン輸送阻害)が、「伸張」という比較的単純な物理的プロセスを通じて効果的に解決できることを実証しました。
- 生産性と柔軟性: 従来の無機固体電解質に比べ、ポリマー電解質は柔軟性が高く、大量生産が容易であるという利点があります。
- 汎用性: 開発された延伸技術は、様々な種類のポリマー電解質に応用可能であり、より安全で長寿命な全固体電池の実用化を加速させることが期待されます。
本研究は、この全固体電池の実現における最大のハードルの一つであった「固体電解質におけるイオン伝導性の低さ」を克服する画期的なアプローチを提供します。
出典:https://techxplore.com/news/2025-11-polymer-electrolyte-safer-longer-solid.html


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