テスラのイーロン・マスクCEOは、2025年の投資家向け説明会において、画期的なバッテリー技術として導入した4680セルのドライ電極(DBE)プロセスを追求したことは「間違いだった」と認めました。これは、DBEプロセスが当初の予想よりも「はるかに困難」であったためです。
| 項目 | 詳細 |
| 技術名 | 4680バッテリーセル(直径46mm、高さ80mm) |
| 問題点 | ドライ電極(Dry Battery Electrode, DBE)プロセスの難航 |
| マスク氏の発言 | DBEプロセスを推進したのは**「間違いだった」**(2025年株主総会) |
| 現在の状況 | 生産コストが高く、生産量が少ない。生産ラインの機械故障が頻繁に発生。 |
| 今後の計画 | サイバートラック、テスラセミ、サイバーキャブ、オプティマスロボット向けに2026年に生産を「劇的に」増やすと約束。 |
🔋 4680セルの当初の期待と現実
テスラは2020年の「バッテリーデー」で4680セルを発表し、従来の2170セルと比較して革新的な改善を約束していました。
当初の約束(2020年)
- サイズ・性能: エネルギー5倍、出力6倍、航続距離16%向上。
- 設計: タブレス設計による電流と熱特性の改善。
- 材料: シリコンアノードと高ニッケルカソードの使用によるエネルギー密度向上。
- 製造(DBE): 製造時間の大幅な短縮とコストの大幅な削減。
現実(2022年以降の分解調査)
- 性能: ほぼあらゆる面で性能が低く、2170セルよりもエネルギー容量が少なく、充電速度も遅い。
- 材料・製造: 2022年時点のセルは、シリコンアノードやコバルト削減は行われておらず、ごく普通のNMC 811セルを大型化しただけと判明。最も期待されたDBEプロセスも採用されていなかった。
🛠️ ドライ電極(DBE)プロセスに関する関連情報
1. DBE技術の背景
- Maxwell社の買収: テスラは2019年にMaxwell Technologiesを買収し、その技術であるDBEプロセスをバッテリー製造に応用しようと試みました。
- 用途のズレ: Maxwell社はこのプロセスをスーパーキャパシタ向けに開発していましたが、バッテリーへの採用は未経験でした。マスク氏は、このギャップを「簡単に克服できる」と考えていましたが、実際は困難を極めました。
2. DBEプロセスの課題
従来のバッテリー電極製造(ウェットプロセス)は、電極材料を溶剤(有機溶媒)に混ぜて塗布し、乾燥させる工程が必要で、これが時間とコスト(エネルギー消費、溶剤回収)の大きなボトルネックとなっていました。
- ウェットプロセス: 材料を溶剤に混ぜる→塗布 → 乾燥(時間がかかる)
- DBEプロセス: 材料を溶剤を使わずに乾燥状態で電極シートにする(乾燥工程を省略し、理論上は大幅な高速化と低コスト化が可能)。
テスラが直面した問題は、DBEプロセスで使用する「圧延機」の技術的な難易度であり、機械が頻繁に故障し、生産性が上がらない状況を招きました。
3. 競合他社の動向
テスラがDBEプロセスに苦戦する中、他のバッテリーメーカーは46mm径の大型セルを既に開発・生産しています。
- BMW「ノイエ・クラッセ」: BMWは円筒形の大型セル(46mm径)をNeue Klasse(ノイエ・クラッセ)モデルに採用する計画であり、驚異的な充電性能を誇るとされています。これらのセルは、DBEプロセスを試みた後に従来のウェットプロセスに移行したメーカー(例:CATLなど)によって開発が進められています。
🔌 今後のテスラの戦略
マスク氏はDBEプロセス推進の誤りを認めましたが、この技術を完全に放棄するかどうかは明言していません(DBE関連の求人は継続中)。
しかし、テスラは「テスラセミ」の量産版や将来の「サイバーキャブ」「オプティマスロボット」など、大型セルの大量供給が必要な製品の展開を控えているため、供給不足に陥る可能性があります。
- 外部サプライヤーへの依存: 計画の実現には、LGES、サムスンSDI、パナソニック、CATLといった外部のバッテリーサプライヤーからの4680セル供給に頼らざるを得なくなる可能性が高いと見られています。
マスク氏が失敗を認めたことは、テスラがこの難題を克服し、量産体制を確立するための新たなアプローチを模索していることを示唆しています。


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