40年の歴史を持つ「NAS電池」が市場から姿を消す 日本ガイシ、撤退の背景にある蓄電池の勢力図変化

Battery技術

日本ガイシは2025年10月31日、約40年にわたる開発・事業活動を続けてきた大容量蓄電池「NAS電池」の製造と販売からの撤退を発表しました。

撤退の主な理由は、中国勢による低価格のリチウムイオン電池(LIB)の市場への大量流入と価格競争の激化、および原材料高騰により、将来的に収益を確保することが困難になったためとされています。


📉 撤退の概要と財務影響

  • 決定日: 2025年10月31日の取締役会
  • 最終出荷日: 2027年1月ごろを予定
  • 特別損失: 2026年3月期の連結決算に約180億円を計上
    • これにより、26年3月期の純利益は横ばいの550億円にとどまる見通し(売上高は半導体関連の好調で従来予想から引き上げ)。
  • 社長コメント: 日本ガイシの小林茂社長は、「潮時かなと思い決心した」と語りました。
  • 顧客対応:
    • 受注済みのものについては、顧客の意向を確認の上、在庫から順次出荷。
    • アフターサービスは「責任を持って継続する」
  • 協業解消: 独BASFグループとのNAS電池関連の協業も解消することで合意。

⚡️ 価格競争激化と事業撤退の主因

  • 想定外の市場変化: NAS電池が持つ長時間の蓄電能力の需要拡大を見込んでいたが、想定を下回る状況が継続。
  • LIBの大量流入: 世界的な電気自動車(EV)市場の減速に伴い、中国勢が大量生産した低価格のリチウムイオン電池が、蓄電池市場に流入し、価格競争が激化。
    • 補足情報: 中国企業はLIBの一種であるLFP電池市場などで圧倒的なシェアを持ち、価格競争力を高めています。
  • 採算の悪化: NAS電池は性能面で優れるものの、原材料の高騰もあり、低価格のLIBとの競争の中で採算をとることが難しくなりました。

🕰️ NAS電池の歴史と過去の試練

  • 開発経緯:
    • 1984年:東京電力と共同で固体電解質の開発に着手。
    • 1989年:研究範囲をNAS電池の開発に拡大。
    • 2002年:事業化。
    • 2003年:世界で初めて量産を開始
  • 期待された役割: 災害時の非常用電源や再生可能エネルギー(太陽光など)の安定供給に貢献すると期待されていました。
  • 火災事故:
    • 2011年9月、納入先の事業所で火災事故が発生し、安全性が問題視された時期もありました。
    • 2012年3月期には、事故関連で600億円超の特別損失を計上。
    • その後、安全対策を手厚くし、運用を継続していました。(NAS電池の累計設置実績は全世界で約200カ所、総容量4,000MWh以上)

➡️ 今後の成長戦略

NAS電池事業撤退後、日本ガイシは以下の分野を当面の成長の柱に据えます。

  • デジタル関連事業: 半導体製造装置用のセラミックスなどが中心。
  • 注力分野: 人工知能(AI)向けのデータセンターの需要増に対応し、「当面はデジタルの製品を新しく市場投入していく」方針。
  • 設備投資: 米国の子会社に対し、89億円を投じて半導体関連部品の生産能力を2割増強する計画。

NAS電池事業撤退は、長年の技術開発の終焉であると同時に、世界的な蓄電池市場の急速な変化と、その中での中国勢の台頭を象徴する出来事と言えます。

出典:https://www.nikkei.com/article/DGXZQOFD316DV0R31C25A0000000/

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