世界最大の電気自動車(EV)用バッテリーメーカーである**CATL(Contemporary Amperex Technology Co., Limited)**の創業者兼会長、ロビン・ゼン(曽毓群)氏は、APEC 2025首脳会議に合わせて韓国を訪問し、韓国の主要財閥トップらと会談します。これは、EV需要の減速と米国の関税強化という地政学的リスクが高まる中で、CATLが韓国企業との提携を深め、グローバル戦略を再構築しようとする動きを示しています。
1. 🤝 連携強化の主な目的
曽氏の今回の訪韓(2023年3月以来)は、主に以下の2つの側面に焦点を当てています。
① 現代自動車グループとの提携拡大(非米国市場)
- 背景: 米国による中国製バッテリーへの関税導入により、北米市場での現代自動車とCATLの提携は困難になっています。
- 焦点: 米国外の市場、特に中東、インド、東南アジアなどの新興市場におけるバッテリー供給提携の拡大に重点が置かれます。これらの市場では、中国製バッテリーのコスト競争力が鍵となるため、提携は不可避と見られています。
- 既存の協力関係:
- CATLは、すでに起亜自動車のEV5向けにNCMバッテリーの供給契約を獲得しています(2025年7月)。
- また、現代自動車のコナ・エレクトリックや起亜自動車のニロEV、レイEVなど、中低価格帯のモデル向けにLFPバッテリーを供給しています。
- 業界では、今回の訪問により、現代自動車グループとCATLの協力がさらに拡大する可能性が指摘されています。
② 韓国からの材料・設備調達
- 目的: バッテリーの品質向上と不良率の低減を目指し、韓国の先進的なバッテリー材料と設備の購入を検討しています。
- 調達対象: NCM(ニッケル・コバルト・マンガン)などの三元系バッテリー材料や、特に自動化、熱処理、シームレスなプロセス統合といった生産工程の合理化に関する韓国の専門知識が不可欠とされています。
- 技術評価: NCMの精密加工による最適化において、韓国の技術が現在中国の技術を上回っていると評価されています。
2. 👥 会談相手と市場におけるCATLの地位
- 会談相手: 現代自動車グループの鄭義宣会長、SKグループの崔泰源会長、LGグループの具光模会長など、韓国の主要財閥トップと面会予定です。
- 市場シェア: EV需要の減速にもかかわらず、CATLは2025年上半期の世界バッテリー市場でトップの座を維持しており、世界で新規登録されたEV等のバッテリー総容量590.7GWhのうち、**約40%(221.4GWh)**を占めています(SNEリサーチ調べ)。
- CATLのグローバル戦略: 曽氏は、以前の会議(第2回一帯一路科学技術交流会議)でも、世界のエネルギー転換を加速するため、工場の共同建設、合弁事業の設立、技術ライセンスを通じた深い産業協力と技術共有の用意があることを表明しており、今回の訪韓もそのグローバル戦略の一環です。
💡 背景情報:曽氏とCATL
- ロビン・ゼン氏: 1999年に家電向けリチウムポリマー電池メーカーのアンペレックス・テクノロジー・リミテッド(ATL)を共同設立し、2011年にATLのEV電池事業を分社化してCATLを設立しました。
- APEC CEO Summit: 曽氏は、Nvidiaのジェンセン・フアン氏など、世界的な企業幹部とともに、APEC首脳会議に先立って韓国の慶州で開催されるAPEC CEOサミットに出席する予定です。これは、アジアが次世代のテクノロジーとエネルギー転換において中心的な役割を担っていることを示しています。
この会談は、米中間の地政学的緊張が高まる中で、グローバルなサプライチェーンの再編とコスト競争力のある新興市場の確保という二重の課題に取り組む、世界の自動車・電池業界の方向性を決定づけるものとなります。


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