本研究は、硫化物系全固体リチウム電池(ASSLB)の高エネルギー密度化と高安全性化に向けた、ニッケルリッチ正極活物質(CAM) の界面安定性向上に関するものです。
📌 研究の概要と主要な化学式(完全プレーンテキスト表記)
| 項目 | 詳細 |
| 対象正極活物質(CAM) | 単結晶 LiNi0.8Co0.1Mn0.1O2 (NCM811系) |
| コーティング材料 | 導電性二元リチウムホウ酸塩ガラス 0.5Li2O – 0.5B2O3 (LOBO) |
| 固体電解質(SE) | Li6PS5Cl (LPSC、硫化物系固体電解質) |
| コーティング層の厚さ | 約 3 nm |
| 主要反応(充放電) | LiNi0.8Co0.1Mn0.1O2 <=> Li(1-x)Ni0.8Co0.1Mn0.1O2 + xLi+ + xe- |
| コーティング前駆体 | Li2O と B2O3 |
⚙️ シンプルな乾式プロセス(ドライコーティング)とその利点
本研究では、溶液を使わないシンプルな乾式プロセス(ドライコーティング技術)を採用し、正極表面に均一な LOBO層を形成させます。
| ステップ | 詳細 |
| 1. 乾式混合 | コーティング前駆体である Li2O と B2O3 の混合物と、NCM 粉末をボールミルにより乾式で混合します。 |
| 2. 熱処理(焼成) | 混合物を空気中 600 度C で 10 時間高温焼成し、NCM 粒子表面に非晶質の LOBO ガラス層(約 3 nm)を形成させます。 |
- 利点: 従来の湿式プロセスに比べて、溶媒が不要なため、より簡単、迅速、環境に優しく、費用対効果が高い製造方法であり、大量生産への応用が期待されます。
🔬 性能向上のメカニズムと電気化学的特性
LOBOコーティングは、高い Li+ イオン伝導率と低い電子伝導性を両立し、固体電池特有の界面問題を解決します。
1. Li+ イオン輸送の強化と LPSC 分解の抑制
- 高 Li+ 伝導率: LOBOガラス(約 10^-6 S/cm)は、NCM@LOBO複合体の Li+ イオン伝導率(8.9 mS/cm)を、コーティングなしの b-NCM(5.0 mS/cm)よりも大幅に向上させ、Li+ の拡散速度を速めます。
- 電子絶縁性: LOBO の電子伝導性(5.4 x 10^-7 S/cm)は非常に低く、高電圧下で正極活物質(NCM)が固体電解質(LPSC)を酸化分解するのを効果的に抑制します。
- 低界面抵抗: NCM@LOBO は LPSC との適合性が良く、界面抵抗が低いため、充放電サイクル中のインピーダンス上昇が大幅に抑制されます。
2. NCM 正極格子構造の長期安定化
- 構造保護: コーティングが正極粒子の表面を保護し、充放電中の体積変化を緩和するため、NCM の内部構造の亀裂や損傷が防がれ、長期的な安定性が保たれます。
- 緻密な CEI 形成: 副反応が抑えられることで、均一で緻密な正極電解質界面(CEI)が形成され、セル全体の安定性に寄与します。
🔋 測定された優れた電気化学的性能
| 性能指標 | NCM@LOBO-0.3% の値 | 備考 |
| 高容量 | 209 mAh/g | 比電流 20 mA/g |
| 長期サイクル安定性 | 1000 サイクル後に 87.8% 容量保持率 | 比電流 200 mA/g |
| 高面容量 | 14.6 mAh/cm2 | 質量負荷 80.3 mg/cm2 の高負荷条件 |
| パウチセル比エネルギー | 383 Wh/kg | Li/μ-Si 負極との組み合わせ |
この研究は、高導電性かつ電子絶縁性のガラスコーティングの設計が、硫化物系全固体リチウム電池の実用化に向けた重要な技術であることを示しています。


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