オンタリオ州が進めてきた「包括的なEVサプライチェーン構想」が、需要の減退やメーカーの計画変更により岐路に立たされています。ダグ・フォード州首相率いる州政府は、当初のEV専業路線から柔軟に方針を転換し、定置型蓄電池(ESS)やAI向け電源などの非自動車分野の需要を取り込むことで、投資と雇用を維持しようとしています。
主要メーカーの動向変遷
- ホンダ: アリストン(Alliston)のEVバッテリー工場計画を需要減により延期。
- フォード: オークビル(Oakville)でのEV生産を延期。代わりにガソリン車「F-series」ピックアップトラックの生産を優先。
- ステランティス: LGとの合弁会社「NextStar Energy」で、EV用からエネルギー貯蔵用バッテリーへ設備の一部を改修。
- GM: インガソル(Ingersoll)工場でのEV配送バン「BrightDrop」の生産を終了。
- ユミコア: オンタリオ州東部のカソード(正極材)工場建設計画を保留。
関連情報と重要ポイント
1. 蓄電池(エネルギーストレージ)への戦略的シフト
EV市場が踊り場を迎える中、バッテリーの新たな出口として「定置型蓄電池」が注目されています。
- 背景: 再生可能エネルギーの普及や、AIデータセンターの急増により、安定した電力網を支える蓄電システムの需要が世界的に高まっています。
- メリット: EV用バッテリーと基本技術(セル)を共有できるため、工場設備を無駄にせず、雇用を維持したまま市場環境の変化に対応可能です。
2. 中国製EVへの関税撤廃問題
カナダは中国との新協定により、中国製EVへの100%関税を事実上撤廃する方向にあります。
- 懸念: 安価な中国製EVの流入が、構築中の国内サプライチェーンを脅かすとの見方があります。
- 期待: 一方で、安価な車両が普及することで「電動車への移行」自体が加速し、長期的にはバッテリー需要の底上げにつながるとの予測もあります。
3. オンタリオ州の電力需要予測
州の電力システム運営者の予測によれば、EV普及やデータセンター建設の影響で、オンタリオ州の電力需要は2050年までに75%増加する見通しです。この莫大な需要を管理するためにも、大規模な蓄電インフラの整備は州にとって「二重の勝利(Double Win)」となる可能性を秘めています。
まとめ:今後の展望
オンタリオ州政府は現在、「何を作るか」よりも「雇用をどこまで守れるか」に重点を置いています。
- 短期的: EV需要が回復するまでの数年間、蓄電池生産が工場の稼働を支える「バッファー」となります。
- 中長期的: 旭化成(セパレーター工場)やフォルクスワーゲン(PowerCoギガファクトリー)などのプロジェクトは継続中であり、北米のバッテリー拠点としての地位維持を目指します。


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