次世代のエネルギー貯蔵技術として期待される「リチウム金属電池(全固体電池)」において、実用化の壁となっていた電解質の脆さを解消する画期的な手法が開発されました。
1. 固体電解質が抱える「ひび割れ」の問題
現在のリチウムイオン電池は液体電解質を使用していますが、これを固体のセラミック電解質(LLZO:リチウム、ランタン、ジルコニウム、酸素の混合物)に置き換える研究が進んでいます。
- メリット: 高エネルギー密度、急速充電、高い安全性。
- 課題: セラミックは陶器のように脆く、製造工程や充放電の圧力で目に見えない微細な「亀裂(クラック)」が生じます。
- 故障の原因: 急速充電時にリチウムがこの亀裂に侵入し、樹枝状結晶(デンドライト)となって成長。最終的に電池を突き破りショートさせてしまいます。
2. 銀イオンによる表面改質技術
スタンフォード大学研究チームは、固体電解質の表面に厚さわずか3ナノメートルの極薄銀(Ag)層を堆積させ、300度(572度F)で加熱する手法を開発しました。
- 銀イオンの拡散: 加熱により銀原子が電解質の表面下20から50ナノメートルの深さまで浸透。リチウム原子と入れ替わることで、金属ではなく「正に帯電した銀イオン(Ag+)」として残留します。
- ひび割れ耐性が5倍に: この銀イオン層がセラミックの表面を硬化させ、機械的圧力による破損耐性が従来の5倍に向上しました。
- リチウム侵入の阻止: 銀イオンの存在が、リチウムが亀裂内部へ侵入・成長するのを物理的・電気的に阻害します。
3. 今後の展開と商業化への課題
この技術は、高価な銀だけでなく、銅などのより安価な金属でも同様の効果が得られる可能性が示唆されています。
- 実証フェーズ: 現在は実験室レベルの小型サンプルでの成功であり、今後はフルサイズのバッテリーセルでの数千回に及ぶ充放電サイクル試験が必要です。
- 波及効果: この表面処理技術は、リチウムだけでなく、資源制約の少ない「ナトリウム系全固体電池」の安定化にも応用できる可能性があります。
関連情報:リチウム金属電池の重要性
リチウム金属電池は、負極にグラファイトではなくリチウム金属そのものを使用するため、理論上のエネルギー密度は現行のリチウムイオン電池の約2倍に達します。 今回の「銀コーティング」のような材料工学的なアプローチは、2026年から2027年頃に市場投入が予測されている全固体電池EVの耐久性と安全性を担保する重要な鍵となります。
出典:https://news.stanford.edu/stories/2026/01/solid-electrolyte-advance-lithium-metal-batteries-research


コメント