米国内サプライチェーンに大打撃:DOEが主要バッテリー工場への助成金7億ドル以上を取り消し

戦略・政策

DOEによる7億ドル以上のバッテリー・製造プロジェクト中止は、トランプ政権(またはトランプ大統領の政策に沿う現政権当局者)が、バイデン政権下での電気自動車(EV)や再生可能エネルギー関連の連邦資金提供を阻止しようとする動きの一環です。これは、DOEが検討しているとされる200億ドル超の予算削減計画の中で、公に確認された最初の大規模な措置となります。

概要と中止の理由

中止されたプロジェクトの規模と内容

  • 総額: 約7億1,800万ドル(5件の助成金)。
  • 対象企業:
    • Ascend Elements: 3億1,600万ドル(ケンタッキー州でのEVバッテリーリサイクル部品工場)
    • ICL Specialty Products: 1億9,730万ドル(セントルイスでのLFP粉末工場)
    • Anovion: 1億1,700万ドル(アラバマ州での合成グラファイト工場)
    • American Battery Technology: 5,770万ドル(ネバダ州での水酸化リチウム工場)
    • LuxWall: 3,170万ドル(デトロイトでの先進ガラス工場)
  • 財源: 2021年の超党派インフラ法によって支援されていたプロジェクト。

DOEによる中止の根拠

DOE広報担当者ベン・ディートデリッヒ氏は、これらのプロジェクトが以下の基準を満たさないと判断されたため中止したと述べています。

  • マイルストーンを達成できなかった。
  • 国のエネルギー需要を十分に満たせない。
  • 経済的に採算が取れない。
  • 税金の投資収益率が上がらない。

DOE長官のクリス・ライト氏は、納税者の利益にならないプロジェクトは中止する権利があると主張し、この資金削減を擁護しています。


関連情報と背景

1. 政治的対立と方針転換

  • トランプ政権当局者の批判: DOE長官のライト氏をはじめとするトランプ政権当局者は、バッテリーやEV、再生可能エネルギーへの連邦政府の資金提供に批判的です。これは、トランプ前大統領が推進する**「国家エネルギー優位」**の政策に基づき、化石燃料産業を重視し、クリーンエネルギーへの連邦支出を削減する姿勢を反映しています。
  • 民主党の反発: 民主党と無所属の上院議員37名は、DOEの措置が違法であり、経済に悪影響を与え、雇用を減少させると非難する書簡を送っています。彼らは、DOEが法律を忠実に執行し、契約上の要件に基づいて資金を支出する義務があると主張しています。

2. サプライチェーンへの影響

中止されたプロジェクトの多くは、米国のEVサプライチェーンにおいて中国への依存度が高い部品や材料(例:バッテリーリサイクル部品、LFP粉末、合成グラファイト、水酸化リチウム)の国内生産を目指していました。

  • Ascend Elementsのプロジェクトは、主に中国から供給されている部品と競合するリサイクル部品の製造を計画していました。
  • ICLAnovionのプロジェクトは、リチウムイオン電池の主要な構成要素である正極材(LFP)や負極材(グラファイト)の国内生産を担う予定でした。

これらのプロジェクトの中止は、バイデン政権が進めてきた国内でのクリーンエネルギーサプライチェーン強化の取り組みに大きな打撃を与えます。

3. 企業側の対応と継続の意思

資金援助を打ち切られた企業は、プロジェクトを継続する意向を示しています。

  • Ascend Elementsは、DOEの助成金以外にも資金調達手段を多様化しており、中止は残りの約1億1,000万ドルに影響するものの、「方向性が変わることはない」と述べています。
  • American Battery Technologyは、資金削減の通知に対して控訴する予定であり、政権が以前はこの重要鉱物プロジェクトを支持していた点に言及し、控訴手続きの結果に関わらずプロジェクトを進めるとしています。

まとめ

DOEによる7億ドル超のバッテリー・製造プロジェクトの中止は、政策変更が米国のエネルギー移行と産業政策に及ぼす影響を示す象徴的な出来事です。これは、国内サプライチェーンの強化を目指すバイデン政権のクリーンエネルギー政策と、化石燃料重視を掲げ、連邦支出を削減しようとするトランプ政権のエネルギー政策との間で生じている激しい対立の現れです。

この決定は、バッテリー関連製造業の国内投資に影響を与え、企業の資金計画に混乱をもたらしますが、一部の企業は自己資金や他の資金調達手段によりプロジェクトを継続する意思を示しています。DOEは今後も「さらに多くの」プロジェクトの中止を進める意向を示しており、連邦政府によるエネルギープロジェクトの予算削減は今後も続く見通しです。

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