中国政府は、電気自動車(EV)用バッテリーのライフサイクル全体を可視化し、安全かつ効率的なリサイクル体制を構築するため、すべての新エネルギー車(NEV)用動力電池に固有の「デジタルID」を割り当てる方針を固めました。これは、2026年4月1日に施行される「新エネルギー車用動力電池のリサイクルと総合利用に関する暫定措置」の一環として導入されます。
背景:押し寄せる「廃棄バッテリーの波」
中国工業情報化部(MIIT)の予測によれば、同国の使用済みバッテリーの量は2030年までに年間100万トンを超える見通しです。初期のEV普及期に販売された車両が順次寿命を迎えるなか、不適切な処理による環境汚染や発火事故を防ぐことが急務となっています。
一方で、使用済みバッテリーは「宝の山」でもあります。適切なリサイクルにより、リチウム、コバルト、ニッケルなどの貴重な重要鉱物を高効率で回収でき、資源の輸入依存度を下げることが可能です。
「デジタルID」が実現する全工程の追跡
新たに導入されるデジタルIDは、バッテリーの「家系図」や「健康診断書」のような役割を果たします。
- 全ライフサイクルの監視: 生産、車両への設置、修理、交換、廃車時の回収、そして二次利用(蓄電池などへの転用)や最終的なリサイクルまで、すべての行程を固有の識別コードで追跡します。
- 責任の明確化: バッテリーメーカーと自動車メーカーそれぞれの回収責任が厳格化され、どの段階で誰が責任を持つのかがデジタル技術によって透明化されます。
- 非公式ルートの排除: 認可を受けていない解体業者や闇市場への流出を防ぎ、消費者が安全な公式ルートへバッテリーを返却する仕組みを整えます。
2026年施行の「史上最も厳しい」安全基準との連動
このデジタルID制度は、2026年に施行される他の厳格な基準とも連動します。
- 不燃・非爆発の義務化(2026年7月予定): 史上最も厳しいとされる安全規格が施行され、熱暴走時に5分間爆発しないという従来の基準から、さらなる安全性の向上が求められます。デジタルIDにより、これら最新基準を満たしたバッテリーかどうかも即座に判別可能になります。
- 回収効率の向上: 2025年のデータでは、中国国内で約40万トンのバッテリーが再利用され、前年比32.9パーセント増を記録しました。主要金属の回収率も世界最高水準に達しており、デジタルIDの導入はこの効率をさらに引き上げると期待されています。
展望:循環型経済のリーダーへ
中国はデジタルIDの導入により、単なる「EVの製造大国」から、資源を国内で循環させる「持続可能な産業大国」への脱皮を図っています。王鵬(Wang Peng)MIIT省エネ総合利用部門責任者は、「これはデジタル技術を用いた重要な制度的革新である」と強調しました。
記事のまとめ
- 施行予定: 2026年4月1日
- 対象: すべてのNEV(新エネルギー車)用動力電池
- 目的: 2030年に100万トンを超える廃棄バッテリーの適正処理と資源回収
- 効果: 生産業者からリサイクル業者まで、全行程をデジタル技術で「見える化」
出典:https://www.chinadaily.com.cn/a/202601/16/WS696a05d5a310d6866eb34342.html


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