中国政府は、世界最大の電気自動車(EV)市場から排出される膨大な使用済みバッテリーを管理するため、「新エネルギー車(NEV)動力蓄電池回収利用管理暫定措置」を公布しました。この規則は2026年4月1日に施行され、バッテリーの生産から最終的な資源回収に至るまで、前例のない厳格な追跡と責任を業界に義務付けます。
1. 新規則の主要な骨子:トレーサビリティの徹底
今回の規制の核心は、バッテリーの「ゆりかごから墓場まで」をデジタル化し、透明性を確保することにあります。
- 国家情報プラットフォームの構築: 工業情報化部(MIIT)が、全ライフサイクルを追跡できるプラットフォームを稼働させます。生産、販売、修理、交換、解体、リサイクル、そして二次利用(蓄電池などへの転用)までの全工程が登録されます。
- 個別識別コードの義務化: すべてのバッテリーは、中国の国家規格「GB/T 34014」に基づいた個別のコードで識別される必要があります。
- 車両とバッテリーの密着: 廃車時にバッテリーを車両から取り外した状態で廃棄することは禁止されます。これにより、不適切なルートへの流出を物理的に遮断します。
2. 製造・輸入業者の新たな義務
メーカー側には、単に作るだけでなく、将来の「ゴミ」に対する重い責任が課されます。
- 環境配慮設計: 毒性が低く、分解・リサイクルが容易な材料を使用することが義務付けられます。
- 情報開示: 適合証明書の受領後20日以内の情報報告や、認証取得後6ヶ月以内の解体技術情報の提出が必要です。
- 回収拠点の設置: 販売地域ごとにリサイクルサービスステーションを設置し、その場所を公開。ユーザーからの使用済みバッテリーを無条件で受け入れる体制を整えなければなりません。
3. 急成長する市場と技術的進歩
中国がこれほどまでに規則を厳格化する背景には、市場の急膨張と、それに伴う資源価値の向上が挙げられます。
- 廃棄量の爆発: 中国の研究機関は、使用済みバッテリーの量が2030年までに100万トンに達すると予測しています。
- 回収効率の向上: 2025年10月時点で、中国の大手リサイクル企業は、リチウムの96.5パーセント、ニッケル・コバルト・マンガンの99.6パーセントを回収する技術を確立しています。
- 市場規模: 中国のリサイクル市場はすでに約5580億元(約780億米ドル)に達しており、CATL傘下の「Brump Recycling」などが業界を牽引しています。
4. 補足情報:さらなる安全・省エネ規制の連動
2026年は、リサイクル以外にもEV業界にとって重要な転換点となります。
- 史上最も厳しい安全基準: 2026年7月からは、バッテリーの「不燃・非爆発」を求める新安全基準が施行されます。釘刺し試験や過充電試験など、より過酷な条件での安定性が求められます。
- 電力消費制限: 2026年1月より、車両重量に応じた電力消費量の上限値(例えば2トンの車両で100kmあたり15.1kWh以下など)を定める国家標準も施行され、効率性と持続可能性の両立が強制されます。
展望
新たに制定された規則により、中国は「使い捨て」のEV文化から「完全循環型」の産業構造へと舵を切りました。バッテリーは環境リスクであると同時に、リチウムやコバルトといった「都市鉱山」としての高い価値を持ちます。この厳格な管理体制が成功すれば、中国は世界のバッテリーリサイクル技術と市場において、圧倒的な主導権を握り続けることになるでしょう。
出典:https://carnewschina.com/2026/01/16/china-implements-strict-ev-battery-recycling-rules-for-2026/


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