自動車用低電圧バッテリーの世界最大手クラリオス(Clarios)は、CES 2026において、スウェーデンのアルトリス(Altris)との提携を強化し、2020年代末までにナトリウムイオン電池(Na-ion)の量産を開始すると発表しました。
1. 提携の主要ポイント
- 共同開発契約(JDA)の締結: 「パワーソディウム(PowerSodium)」プラットフォームに焦点を当て、技術・商業面での連携を正式化。
- 出資拡大: クラリオスはアルトリスへの出資を増やし、欧州におけるサプライチェーンの強靭化を図る。
- 3社連携: スロバキアのイノバット(InoBat)を加えた3社で、イノバットの施設にて自動車向け試験セルの組立を準備中。
2. ナトリウムイオン電池の技術的メリット
試験段階で確認された主な特性は、現代の車両(特に寒冷地や高出力が求められる環境)に非常に適しています。
- 低温性能: -25度(マイナス25 degree Celsius)までの優れた始動能力。
- 高出力: 内部抵抗が低く、高い出力密度(Power Density)を実現。
- 持続可能性: レアアースやリチウム、コバルトを使用せず、安価で豊富なナトリウムを使用。
- 循環型経済: 従来の鉛蓄電池と同様に、リサイクルが容易な設計が可能。
3. 量産・投資戦略
クラリオスはこのプロジェクトを、グローバルな次世代技術戦略の中核に据えています。
| 項目 | 内容 |
| 量産開始時期 | 2020年代末まで |
| 生産拠点 | 欧州または米国の専用施設(地域調達リスクの軽減) |
| 投資規模 | 米国への総投資額 6 billion dollars のうち、1 billion dollars を次世代技術に充当 |
| 試験施設 | スロバキアのイノバット施設(年間最大 50,000 セルの生産能力) |
| 性能検証 | ドイツ・ハノーバーにあるクラリオスのR&Dラボで実施 |
関連情報の補足:なぜ「低電圧」ナトリウムイオンなのか?
今回の発表で重要なのは、これが電気自動車(EV)の駆動用メインバッテリー(高電圧)ではなく、低電圧(12V/24V/48V)システムをターゲットにしている点です。
- 車載電子機器の急増: 自動運転、先進運転支援システム(ADAS)、インフォテインメントの進化により、車両の「低電圧電源」に対する信頼性要求がかつてないほど高まっています。
- 鉛蓄電池の補完・代替: 従来の鉛蓄電池は信頼性が高いものの、重く、リサイクル規制の影響を受けやすい側面があります。ナトリウムイオン電池は、リチウムイオン電池よりも安価で安全性が高く、かつ鉛蓄電池よりもエネルギー密度が高いため、次世代の標準となる可能性があります。
- 脱リチウム依存: リチウムの価格変動や地政学的リスクを避けるため、欧米の自動車メーカーは「リチウムフリー」のサプライチェーン構築を急いでいます。
今後の展望:
クラリオスが狙うのは、既存の「化学特性に依存しない(Chemistry-agnostic)」戦略です。つまり、自動車メーカーの要望に合わせて、鉛、リチウム、ナトリウムのいずれのバッテリーも提供できる体制を整えることで、市場のリーダーシップを盤石にする狙いがあります。


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