なぜ全固体電池は未だに自動車に使用されていないのか?

Battery主要部材

全固体電池は、エネルギー密度の高さと安全性から「究極の動力用電池」と期待されていますが、技術、プロセス、コストの3つの大きな壁が立ちはだかっています。

1. 技術的課題:固体特有の接触不良

液体電解質を使用する従来の電池とは異なり、全ての部材が固体であるために発生する物理的な問題が最大障壁となっています。

  • 固体-固体界面の高インピーダンス(抵抗): 液体は電極の隅々まで行き渡りますが、固体電解質は電極との間に隙間が生じやすく、イオンの移動が妨げられます。
  • 「呼吸効果」による剥離: 充放電の際、負極はリチウムイオンの挿入・脱離によって膨張と収縮(呼吸)を繰り返します。これにより固体同士の接触面が物理的に離れてしまい、電池性能が急激に劣化します。

2. 電解質材料の選択:一長一短の技術ルート

現在、主に3つのルートで開発が進んでいますが、それぞれに致命的な弱点があります。

  • 硫化物系(主流): イオン伝導性は高いが、空気中の水分と反応すると有毒な硫化水素を発生させるため、極めて厳格な製造環境と設備が必要です。
  • 酸化物系: 安定性は高いが、ガラスのように硬く脆いため加工が難しく、電極との界面接触も悪いです。
  • ポリマー系: 製造は比較的容易だが、60-80℃以上の高温でないと十分な導電性が得られません。

3. プロセスとコストの壁

  • 生産ラインの改造: 液体電池の生産ラインをそのまま使うことはできず、全固体電池への移行には設備の60%以上を改造する必要があるとの指摘もあります。
  • 圧倒的な高コスト: 現在の全固体電池のコストは、液体電池の5-10倍。自動車メーカーが吸収できる範囲を大きく超えています。
  • 負極材料の未熟さ: 高エネルギー密度を狙い「シリコン炭素負極」が検討されていますが、膨張率が大きくサイクル寿命を縮める原因となっています。

4. 主要企業の最新動向と量産時期

各社が研究成果を発表していますが、量産時期は当初の予測より慎重(後ずれ)になっています。

  • CATL (寧徳時代): 2027年に小規模量産、2030年頃に本格量産と予測。技術成熟度は現時点で「9ポイント中4ポイント」と評価。
  • 奇瑞汽車 (Chery): エネルギー密度 600 Wh/kg の「Rhino S」を発表。2027年に最初の車載検証を目指す(量産から検証へ表現を後退)。
  • サンウォダ (Sunwoda): エネルギー密度 400 Wh/kg の「Xin Bixiao」を発表。2030年以降の少量生産が最も楽観的なシナリオと言及。

比較データまとめ(主要指標)

指標現行リチウムイオン電池 (LFP/三元系)全固体電池 (目標値)
エネルギー密度200 – 300 Wh/kg400 – 600 Wh/kg
航続距離約 500 – 700 km1200 – 1300 km
コスト基準 (1.0)5.0 – 10.0 倍
安全性発火リスクあり (有機電解液)極めて高い (難燃性固体)
本格普及時期普及済み2030年以降

結論

二流・三流の電池メーカーや一部の自動車メーカーが積極的に進捗を発表している背景には、既存の市場リーダー(CATL等)の優位性を覆す「技術革命」への期待があります。しかし、現実には複雑な化学反応の制御と莫大な生産コストの削減が必要であり、一般ユーザーが手にするまでには、まだ数年以上の時間が必要な「未来の技術」と言えます。

出典:https://36kr.com/p/3535624435408002

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