蓄電池はエネルギー転換の「制約」ではなくなる:SIBがもたらす100TWh超の蓄電社会

Battery技術

本研究は、低コストで資源豊富な材料を使用するナトリウムイオン電池(SIB)が、既存のリチウムイオン電池(LIB)を代替または補完し、2050年までの世界のエネルギー転換にどのような影響を与えるかを包括的に評価したものです。

1. バッテリーセルのコスト分析

ボトムアップのコストモデリングにより、SIBとLIB(特にLFP:リン酸鉄リチウム)の経済性が比較されました。

  • 現状 :
    • SIBとLIBのセルコストはほぼ同等(約 93 Euro/kWh)です。
    • SIBは正極材料や集電体(銅の代わりに安価なアルミニウムを使用)でコスト優位性がありますが、エネルギー密度の低さがその利点を相殺しています。
  • 将来予測(2035年まで):
    • 材料の性能向上により、SIBのセルコストは 79 Euro/kWh まで低下し、LIB(82 Euro/kWh)を下回る見通しです。
    • SIBは「ドロップイン技術」であり、既存のLIB生産ラインをわずかな変更で活用できるため、急速な普及が可能です。

2. 2050年までの設備投資額(CAPEX)予測

学習率(LR)と市場シェアのシナリオに基づき、実用規模のバッテリーシステムのコスト推移を予測しています。

  • 2050年の設備投資額: 市場の成熟により、28.5から51.9 Euro/kWh まで低下すると予測されています。
  • 市場シェアシナリオ:
    • 破壊的イノベーション(DIS): SIBが市場の90%を占める。
    • 共有市場(SMS): SIBが市場の50%以上を占める。
  • 学習率: SIBは原材料の制約が少ないため、LIBよりも高い学習率(コスト削減率)を達成できる可能性があります。

3. 世界のエネルギーシステムへの影響

エネルギーシステムモデル(LUT-ESTM)を用いたシミュレーションの結果、安価なSIBの導入は以下のような変化をもたらします。

  • 貯蔵容量の大幅増: 2050年までに定置型バッテリーの総需要は 67.9から106.5 TWh に達すると予測されます。これは、従来の予測を大幅に上回る数値です。
  • 太陽光発電(PV)と風力発電への影響:
    • 安価なバッテリーの存在は、太陽光発電の設置容量を増やすのではなく、既存の太陽光電力を夜間へシフトさせる能力(利用率)を高めます。
    • 結果として、夜間の電力を補うための風力発電の必要性が最大 18.4% 減少します。
  • Power-to-X(合成燃料製造)の運用:
    • 安価なバッテリーにより、合成燃料(メタノールやメタンなど)の製造プロセスがより柔軟に運用されます。
    • 日中の余剰電力をバッテリーに蓄え、夜間に合成ユニットを稼働させることで、水素貯蔵や一部の合成装置の容量を削減できる可能性があります。

4. 結論と提言

SIBの台頭により、リチウム供給の混乱や価格高騰のリスクは解消されたと見なすことができます。

  • 制約要因の解消: 電気化学エネルギー貯蔵(バッテリー)は、もはや世界のエネルギー転換を妨げるコスト的な制約要因ではなくなりました。
  • 経済的インパクト: システム全体のエネルギーコスト(LCOE/LCOFE)への直接的な影響は限定的(約1.5から1.8%の変動)ですが、供給の安全性とシステムの柔軟性は大幅に向上します。

出典:https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S2352152X2504575X?via%3Dihub

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