Ilika社、小型全固体電池「Stereax M300」の出荷開始を発表 ─ 医療用インプラント市場の商用化へ大きな一歩

Battery用途

英国の全固体電池(Solid-state battery)の先駆者である Ilika(イリカ)社 は、2025年12月18日、小型全固体電池 Stereax M300 のプロトタイプを主要顧客に向けて出荷開始したと発表しました。これは、同社が研究開発段階から商業化フェーズへと移行する重要な節目(マイルストーン)となります。

1. 出荷の背景と製造体制

  • 戦略的パートナーシップ: 2023年8月に締結された10年間の製造契約に基づき、米国の大手医療機器受託製造(CDMO)である Cirtec Medical(サーテック・メディカル)社 のマサチューセッツ州ローウェル施設にて生産が行われました。
  • 供給先: 既存の受注残がある21社の顧客に割り当てられます。これには、唾液による健康モニタリングを行う Lura Health社 などが含まれます。
  • 目的: 顧客からのフィードバック収集と、能動型埋め込み型医療機器(AIMD)向けの本格的な試験データ(M300試験プログラム)の生成。

2. Stereax M300の技術的利点と用途

Stereax M300は、従来の液体電解質を用いる電池と比較して、医療インプラントに最適化された特性を備えています。

  • 主な用途(AIMD):
    • 神経刺激装置(ニューロモジュレーション)
    • 埋め込み型センサー、整形外科用インプラント
    • 歯列矯正用ウェアラブル、眼科用機器
  • 技術的メリット:
    • 小型・薄型: デバイスの小型化を可能にし、手術時間の短縮や、より治療部位に近い場所への設置を実現。
    • 長寿命・高安全性: 固体電解質により漏液や発火のリスクを低減。
    • 急速充電: 自宅での充電が可能で、高出力(Bluetooth通信など)にも対応。

3. 市場規模と今後の展望

Ilika社のCEO、グレアム・パーディ氏が示した市場予測は以下の通りです。

項目内容
対象市場(AIMD)年平均成長率(CAGR)1桁後半で推移、400億ドル規模
小型電池部品の価値2億5,000万ドル以上の潜在価値
ビジネスモデルIP(知的財産)ライセンス供与によるロイヤリティ収入モデル

【関連情報】Ilika社の製品ポートフォリオと技術的背景

Ilika社は、用途に合わせて大きく2つの製品ラインを展開しています。

  1. Stereax(ステリアックス):
    • 今回発表されたマイクロバッテリー。
    • ミリメートル(mm)単位の極小サイズ。
    • 医療用インプラントのほか、産業用IoT(高温環境下のセンサーなど)をターゲットにしています。
  2. Goliath(ゴライアス):
    • 大型の全固体電池。
    • **電気自動車(EV)**やコードレス家電向け。
    • 高いエネルギー密度と急速充電性能、安全性を両立させる次世代車載電池として開発中。

全固体電池が医療機器に求められる理由

従来の電池では、電解液の漏出が人体に悪影響を及ぼすリスクがありました。全固体電池は、電解質が固体であるため、エネルギー密度を高めつつ、人体内での安全性を飛躍的に向上させることができます。また、数千回以上の充放電サイクルに耐えるため、再手術による電池交換の頻度を減らせる点が最大の強みです。

出典:https://www.ilika.com/latest-news/ilika-announces-initial-stereax-m300-shipments

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