フォード・モーターは、韓国のバッテリー大手**LG Energy Solution(LGES)**と締結していた約65億ドル(約9兆6000億ウォン)相当の供給契約をキャンセルしました。これは、急速に冷え込むEV需要と、米国の政権交代に伴う政策転換を背景とした劇的な決定です。
1. 契約解消の概要
- 契約の内容: 2023年10月に締結された、2026年から2027年にかけて欧州市場のフォード車向けにバッテリーを供給する2件の契約。
- 解消の理由: * フォードによる一部EVモデルの生産中止。
- 世界的なEV需要の減速。
- 米国トランプ政権による政策変更(環境規制の緩和や補助金の見直し)への警戒。
2. フォードの劇的な方針転換
- 巨額の減損: フォードは、EV事業に関連して 195億ドル もの減損処理を行うと発表。これは事実上の「EV撤退・縮小」への宣言とも取れる規模です。
- 韓国メーカーへの影響: * LGES: 欧州向けの供給網が寸断。
- SK On: 先週、フォードとの米国合弁工場に関するパートナーシップ終了が発表されたばかり。2022年に合意された 114億ドル 規模の投資計画も暗礁に乗り上げています。
【関連情報】米国の政策変更と自動車業界への影響
このニュースの背後にある、より広範な市場背景を補足します。
A. 「トランプ2.0」とIRA(インフレ抑制法)の不透明感
2025年からのトランプ政権発足に伴い、バイデン政権下で進められてきたEV優遇策が見直されています。
- 補助金の撤廃: EV購入者への最大7,500ドルの税額控除が撤廃される可能性。
- 燃費規制の緩和: 内燃機関(ガソリン車)やハイブリッド車(HEV)への回帰を容易にする政策へのシフト。これが、フォードをはじめとするOEMが多額の投資を伴うEV計画を「キャンセル」する最大の動機となっています。
B. 「EVキャズム」とハイブリッド車への回帰
世界的にEVの普及スピードが鈍化する「キャズム(溝)」に直面しており、フォードは以下の戦略へシフトしています。
- ハイブリッド重視: 完全なEV(BEV)ではなく、収益性の高いハイブリッド車や商用車「Ford Pro」部門へのリソース集中。
- コスト削減: 赤字が続くEV部門の損失を最小限に抑えるため、高価なバッテリー契約を白紙化。
C. 韓国バッテリーメーカーの苦境
これまで米国・欧州市場を独占的に狙ってきた韓国の「K-バッテリー」勢(LGES、SK On、Samsung SDI)は、最大の顧客である米OEMの戦略転換により、過剰在庫と工場稼働率の低下という深刻なリスクに直面しています。
まとめ:フォードのEV戦略見直しと各社への影響
| 項目 | 詳細・数値 |
| キャンセルされた契約額 | 約65億ドル (LGES) |
| フォードの減損額 | 195億ドル |
| 主な要因 | EV需要の減退、トランプ政権による政策変更 |
| SK Onとの状況 | 114億ドルの合弁プロジェクトを終了 |
今後の見通し: > フォードの決定は、他の米系メーカー(GMやステランティス)の戦略にも連鎖する可能性があります。バッテリーメーカー側は、EV一辺倒から、定置用蓄電池(ESS)やLFP電池への多角化を加速させる必要に迫られています。


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