VW傘下PowerCo、ザルツギッターで「統合セル」の量産を開始

Battery技術

2025年12月17日、PowerCoは計画通りザルツギッター工場(Salzgitter)にて統合セルの最初の生産を完了しました。2022年の定礎からわずか3年での稼働開始となります。

  • 生産能力: 第一段階として年間 20 GWh(電気自動車約25万台分)を確保。将来的には 40 GWh まで拡張可能です。
  • 戦略的役割: この工場は「リードファクトリー(母工場)」と位置付けられ、今後稼働予定のバレンシア(スペイン)やセントトーマス(カナダ)の工場のモデルとなります。

2. 「統合セル(Unified Cell)」とは何か

統合セルは、フォルクスワーゲン(VW)グループが将来のEV戦略の柱として掲げる標準化バッテリーです。

  • 形状の共通化: セルの外寸を 256 x 24.8 x 106 mm の角柱型に統一。これにより、車種を問わず車体への搭載設計を共通化でき、大幅なコスト削減(規模の経済)を実現します。
  • 中身の多様性: 外形は同じでも、内部の化学組成を柔軟に変更可能です。
    • LFP(リン酸鉄リチウム): 低価格・普及モデル向け。
    • NMC(ニッケル・マンガン・コバルト): 高性能・長航続距離モデル向け(現行比でエネルギー密度約10%向上)。
    • 全固体電池: 将来的な次世代技術にも対応可能な設計。
  • 採用車種: VW ID. Poloなどのコンパクトカーから、ポルシェなどのスポーツカーまで幅広く搭載予定です。

3. 関連情報:背景と市場環境

自社生産と外部調達のハイブリッド戦略

VWグループは、必要なバッテリーのすべてを自社で賄うわけではありません。

  • 自社(PowerCo): 需要の約半分を供給。欧州での技術主権と独立性を確保します。
  • 外部パートナー(Gotion High-Techなど): 残りの半分を調達。中国のGotion(国軒高科)はVWが出資するパートナーであり、すでに中国で統合セルの生産を開始しています。これにより、特定の供給元に依存するリスク(シングルソース・リスク)を回避しています。

欧州の「技術的自立」への挑戦

現在、車載電池市場は中国(CATL、BYD等)や韓国勢が圧倒的なシェアを誇っています。ザルツギッターでの生産開始は、**「設計・開発・製造のすべてを欧州で行う」**という点で、アジア勢の技術に依存しない欧州独自のサプライチェーン構築に向けた大きな一歩となります。

VW内部の厳しい状況

この成功の裏で、VWグループは現在、ドイツ国内工場の閉鎖検討や大規模なコスト削減策を迫られています。創業家(ポルシェ家・ピエヒ家)からは巨額のバッテリー投資に対する厳しい視線も注がれており、今回の稼働開始のアナウンスには、社内外の批判を払拭し、投資の正当性を証明する狙いもあると考えられます。


主要スペック・データまとめ

項目詳細内容
拠点名PowerCo ザルツギッター工場(ドイツ)
敷地面積約69,000平方メートル(サッカー場約10面分)
初期生産能力20 GWh / 年(最大 40 GWh まで拡張可)
統合セルのサイズ256 x 24.8 x 106 mm
主な化学組成NMC(高密度)、LFP(低コスト)
競合比較(Gotion製)LFP: 190 Wh/kg / NMC: 265 Wh/kg

今回のザルツギッター工場の稼働は、VWが単なる自動車メーカーから、エネルギー領域までを垂直統合する「モビリティ企業」へと脱皮できるかどうかの試金石となります。

出典:https://batteryindustry.net/powerco-launches-unified-battery-cell-manufacturing-at-its-salzgitter-site/

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