中国のバッテリーメーカーであるHithium(ハイチウム)は、2025年12月12日の年次エコシステムデーにおいて、従来の4時間駆動を超える長期エネルギー貯蔵(LDES)と、エネルギー集約型AIデータセンター市場への参入を目的とした新たなバッテリーセル、システム、およびハイブリッドソリューションを発表しました。
この発表は、再生可能エネルギーの断続性(グリッド側の課題)と、AIインフラの急速かつ変動の激しい電力需要(負荷側の課題)という、電力システムに対する主要な2つの相乗的な圧力に対応するための戦略的なポートフォリオ構築を示しています。
🔋 1. 製品ラインナップの概要
Hithiumが発表した製品は、以下の3つの相互に関連する階層構造で構成されています。
| 階層 | 製品名 | 主要技術 | 用途/特徴 |
| セル | ∞Cell 1300Ah 8h | 超厚電極技術 | 8時間駆動向け専用設計、単セル容量1,300Ah |
| システム | ∞Power 8 6.9MW/55.2MWh | ネイティブ8時間アーキテクチャ | 世界初を謳うネイティブ8時間駆動リチウムシステム |
| ソリューション | AIデータセンター向け∞Power | リチウム・ナトリウムハイブリッド | 長時間バックアップと超高速応答を両立 |
🔬 2. セルからシステムへ:ネイティブ8時間アーキテクチャ
1-1. ∞Cell 1300Ah 8h(バッテリーセル)
- 容量と設計: 単セル容量は1,300Ahで、主流のセルの4倍以上。短時間駆動設計からの流用ではなく、8時間駆動向けに専用開発されました。
- 超厚電極技術: 長時間駆動大型セル特有の課題(電極のひび割れ、輸送速度の遅さ、濡れ性)を克服。電極厚みを大幅に増やし、2時間セルと比較して箔などの通電部品コストを50%以上削減。
- システムコスト削減: セル容量が大きいため、長期駆動プロジェクトのシステム部品数を30%以上削減し、初期資本コストを抑制。
- 安全性と寿命: セル間の熱暴走伝播を防ぐ多層安全アーキテクチャを採用し、25年以上の耐用年数を目指して設計されています。
1-2. ∞Power 8 6.9MW/55.2MWh(ストレージシステム)
- 構成: 6.9MWの電力と55.2MWhのエネルギーを供給する標準化されたユニット。中電圧モジュール1個とバッテリーモジュール8個を組み合わせた高度に統合された構成。
- 設置効率: 前世代機と比較して、現場での設置効率が18%向上、土地利用が23%削減。主流の6MWhシステムと比較して、全体的な統合度が10%以上向上、組み立て効率が30%以上向上。
- 運用効率: インテリジェント制御とアクティブバランシングを採用。補助電力消費量を30%以上削減、温度制御精度を50%向上、応答速度を20%向上。バランシング効率は97%を超え、1GWhの長期プロジェクトで100万ドル以上の節約が可能と試算。
- 安全性: 高強度スチールバンド、デュアルベント急速圧力緩和構造、800°C、300kPaに耐える次世代断熱材を搭載。同社は「開放燃焼」試験に合格した初のバッテリーメーカーと主張。
- 商用納入: 2026年第4四半期に予定。
💻 3. AIデータセンターへの拡張:リチウムとナトリウムの融合
- ソリューション: リチウムイオン技術とナトリウムイオン技術を組み合わせた、AIデータセンター向け**∞Power**ソリューション。
- 構成要素: 4時間および8時間駆動のリチウム蓄電ユニット(長時間エネルギー供給)と、1~2時間駆動の高効率ナトリウムイオンシステム(超高速電力応答)を統合。
- 適用根拠: AIデータセンターは数十ミリ秒以内に最大70%の電力変動が発生する可能性があり、電力網と現場機器に大きなショックを与えます。
- ナトリウムイオン電池の役割:ミリ秒レベルの応答性で電力ショックを吸収し、変動吸収の最前線として機能。
- 自社製のナトリウムイオン電池は2万サイクル以上の駆動が可能、耐用年数は25年超。
- システム全体の効率を3%以上向上。
- リチウムシステムの役割: 持続的なバックアップ電力を供給。最長4時間のバックアップ用途において、ディーゼル発電機と比較して20%以上のコスト削減が可能であり、静音で炭素排出量ゼロのバックアップ電源を実現。
- 電力インフラの構築: 8時間蓄電と再生可能エネルギーを組み合わせることで、データセンターの電力インフラ構築期間を従来の5~10年から1~2年に短縮し、「電力を待つコンピューティング」問題の解決に貢献する可能性。
🌐 関連情報
1. 長期エネルギー貯蔵(LDES)の重要性
LDES(Long-Duration Energy Storage)は、通常4時間以上、時には数十時間から数百時間、電気を貯蔵し供給できる技術を指します。再生可能エネルギー(太陽光、風力)の導入拡大に伴い、**「ダックカーブ」**問題(日中の電力余剰と夕方の急激な需要増)や季節的な変動を平準化するために不可欠です。Hithiumの8時間システムは、このLDES市場の核となるセグメントをターゲットとしています。
2. AIデータセンターの電力需要
AI(人工知能)技術の進化と普及に伴い、大規模な計算処理を行うデータセンターの電力消費量が爆発的に増加しています。AIチップ(GPUなど)は電力密度が非常に高く、急激で大きな負荷変動を引き起こします。従来のデータセンターの電源システムでは対応が難しくなっており、Hithiumがリチウムとナトリウムのハイブリッドで対応しようとしている**「長時間バックアップ」と「超高速応答」**の機能が特に重要になっています。
3. ナトリウムイオン電池(Na-ion)について
ナトリウムイオン電池は、リチウムイオン電池と動作原理は類似していますが、リチウム(Li)の代わりにナトリウム(Na)を主要な電荷キャリアとして使用します。
- 利点: ナトリウムはリチウムよりも地球上に豊富に存在し、安価で、資源供給のリスクが低い。
- Hithiumの活用: Na-ion電池は一般的にLi-ion電池よりもエネルギー密度は低い傾向がありますが、充放電サイクル寿命が長い点や、Li-ionよりも高速な充放電特性(ミリ秒レベルの応答性)を活かし、AIデータセンターの「瞬間的な電力変動吸収」というニッチな役割に組み込まれています。
Hithiumの戦略は、セルの革新(超厚電極)からシステム全体の統合効率向上、そして最終的なアプリケーション固有のハイブリッドソリューション(AIデータセンター)に至るまで、垂直統合されたアプローチを通じて、成長するLDESとデジタルインフラ市場を捉えようとするものです。


コメント