高性能リチウム金属電池の鍵:フッ素と窒素供与性添加剤による二層界面の構築

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韓国科学技術院(KAIST)の崔南順(チェ・ナムスン)教授らが率いる研究チームは、次世代高エネルギー電池として期待されるリチウム金属電池(LMB)の主要課題である樹枝状リチウム(デンドライト)の成長と急速な劣化を克服するため、フッ素供与体と窒素供与体の2種類の添加剤を組み合わせる新しい電解質システムを開発しました。

このアプローチにより、負極(アノード)と正極(カソード)の両方に安定した界面層(SEIとCEI)が構築され、LMBの長期サイクル性能が大幅に向上しました。

1. 課題解決の鍵:機能性添加剤による二層SEIの構築

リチウム金属負極(アノード)は高いエネルギー密度を持つ一方で、充電・放電時に不均一なリチウムの析出・溶解(めっき/剥離)が発生し、樹枝状リチウムが成長して電池の耐久性を損なうという問題がありました。

研究チームは、この問題に対応するため、**硝酸リチウム(LiNO3)リチウムジフルオロ(ビスオキサラト)リン酸塩(LiDFBP)**をエーテル系電解質に添加しました。

添加剤役割(供与体)構築するSEI層特性
LiNO3窒素供与体外部SEI層イオン透過性の高いLi3Nを含み、Liイオンの均一な輸送をサポートする。
LiDFBPフッ素供与体内部SEI層機械的に強固LiFに富み、樹枝状リチウムの成長を緩和する。

二層SEI構造の優位性

この添加剤の相乗効果により、リチウム金属アノード上に以下のような優れた構造の**二層固体電解質界面(SEI)**が形成されます。

  1. 内部(LiFリッチ): 機械的な強度が非常に高いLiF(フッ化リチウム)が、リチウムめっき・剥離に伴う巨大な体積変化に耐え、デンドライトの核生成を抑制します。
  2. 外部(Li3Nリッチ): Li3N(窒化リチウム)は高いリチウムイオン伝導性を持つため、Liイオンを均一に供給し、連続的な電解質分解を抑制します。

2. 正極(カソード)への保護効果と実証性能

この電解質システムは、負極だけでなく、正極の安定性も高めています。

  • 正極(NCM811)の強化: 高ニッケル系正極であるLiNi0.8Co0.1Mn0.1O2(NCM811)は劣化しやすい課題がありますが、添加剤LiDFBPが還元されることで、NCM811カソード上に保護的な**カソード-電解質界面(CEI)**が形成され、電解質の分解を抑制します。

LiDFBPとLiNO3を含むエーテル系電解質を使用したLi|NCM811フルセルは、実用化に向けて非常に有望な結果を示しました。

  • 長寿命: 600サイクルの長寿命化を達成。
  • 容量維持率: 600サイクル後も**80.9%**の高い容量維持率。
  • クーロン効率(CE): **99.94%**という極めて高いクーロン効率。

3. 関連情報(リチウム金属電池の実用化に向けた動き)

  • LMBの優位性: リチウム金属(Li)は、従来のグラファイト負極(理論容量 372 mAh/g)と比較して、**最高の理論容量(3860 mAh/g)**を持ち、次世代EV向けに開発が加速しています。
  • デンドライト問題への対応: 樹枝状リチウム(デンドライト)の成長は、容量低下と安全上のリスクに直結するため、本研究のようなSEIの構造制御は、LMB実用化の最大の障壁を打破する主要な戦略となっています。
  • スタートアップの競争: 世界中の多くのスタートアップや大手自動車メーカーが、リチウム金属負極の安定化技術に大規模な投資を行っており、2020年代後半の実用化を目指しています。

出典:https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S2405829721004931?via%3Dihub

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