ドイツのアキュレック・リサイクリング株式会社は2025年12月1日、ノルトライン=ヴェストファーレン州クレーフェルトに、あらゆる種類のリチウム電池からリチウムを回収できる「欧州唯一の施設」を正式に稼働開始しました。これは、リチウム電池のバリューチェーンにおける欧州の資源回復力と競争力を高める、重要な節目となります。
✨ プロジェクトのハイライト
| 項目 | 詳細 | 意義 |
| 企業名 | アキュレック・リサイクリング株式会社 (Accurec) | 30年にわたり使用済みバッテリーからの原料回収を専門とする。 |
| 場所 | ドイツ、ノルトライン=ヴェストファーレン州 クレーフェルト | |
| 技術名 | CLIMAプロセス (Critical Lithium-ion battery material Recovery Process) | アキュレック社が開発した独自の熱化学プロセス。 |
| 回収能力 | あらゆる種類のリチウムイオン電池からリチウム回収が可能。 | 欧州で唯一の施設と謳われる。 |
| 収率/品質 | 99%を超える高い収率と品質レベルを実現。 | 重要な原材料を欧州内に留め、資源の回復力を高める。 |
| プロセス特長 | 重要な原材料を容易に分離可能な形態に変換し、最小限のエネルギーと資源消費で抽出。 | 既存のアジアの技術を単純にコピーするのではなく、欧州のコスト構造で競争力を持つための革新的な代替プロセス。 |
🔬 共同研究と将来の展望
アキュレック社は、さらなるリチウム収率向上を目指し、化学大手のエボニック社(Evonik)と共同研究プロジェクト(EarLi*)を進めています。
- エボニック社の貢献:
- 廃水中に溶解したリチウムを、高選択性セラミック膜を用いて電気化学的に分離・回収する技術を開発。
- これにより、高純度の水酸化リチウム一水和物をコスト効率的かつエネルギー効率の高い方法で単離することが期待されています。
- これは、リチウムサイクルを完結させ、環境負荷を最小限に抑えながらeモビリティを推進するソリューションです。
- 今後の拡大:
- アキュレック社は、このCLIMAプロセスの拡大に既に着手しており、すべての許可が得られ次第、リチウム生産量を2倍にすることを目指しています。
🌍 関連情報:リチウムの重要性と欧州の課題
1. リチウムの戦略的重要性の高まり
リチウムイオン電池は、家電、電気自動車(EV)、定置型エネルギー貯蔵システム(ESS)で過去最高の販売数を記録しており、リチウムはその「白い石油」とも呼ばれる極めて重要な産業用金属です。
2. アジアへの一極集中と欧州の危機感
- 現状: バッテリー原材料のバリューチェーン全体にわたる技術的ノウハウと製造の専門知識は、ほぼすべてアジア(特に中国)に集中しています。
- 中国の優位性: 中国ではリサイクルプロセスが早くから重要視され、垂直統合され、政府からの多額の補助金により、欧州では競争が難しいほどの低い運用コストで確立されています。
- 欧州の戦略: 欧州委員会は、クリーンエネルギー、デジタルトランスフォーメーション、持続可能な輸送など、多分野におけるリチウムの安定供給と資源回復力を強化するため、アキュレック社のような自立したリサイクル施設の開発を不可欠と位置づけています。
3. 湿式・乾式リサイクルと熱化学プロセス
リチウムイオン電池のリサイクル技術は、大きく分けて**湿式(Hydrometallurgy)と乾式(Pyrometallurgy)**の二つが主流です。
- 乾式(熱処理): 高温で燃焼・溶解させる方法。エネルギー消費が大きいが、前処理が比較的容易。
- 湿式(化学溶解): 化学薬品を用いて金属を溶解・分離する方法。エネルギー効率が良いが、廃液処理が課題となることがある。
- アキュレック社の技術: アキュレック社が開発した「熱化学プロセス(CLIMA)」は、これらの技術の良い点を組み合わせた革新的な代替プロセスであり、最小限のエネルギーと資源消費で高収率を実現している点で、欧州のコスト構造に合わせた競争力を持つための独自の技術と見られます。
このプロジェクトは、欧州がクリーンテックのサプライチェーンにおいてアジアへの依存度を減らし、循環型経済を推進するための具体的な成果として注目されます。


コメント