リチウムイオン電池の電解液設計が数値化へ 試行錯誤から脱却

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大阪大学産業科学研究所の近藤靖幸助教、山田裕貴教授らと、ダイキン工業の山崎穣輝博士らの研究グループは、リチウムイオン電池の負極(黒鉛)における充放電反応の可否を定量的に示す指標として、「電解液中のリチウムイオン化学ポテンシャル」が決定的な役割を果たすことを世界で初めて明らかにしました。

この発見により、これまでの試行錯誤による電解液開発から脱却し、数値に基づく合理的な設計が可能となり、電池の高性能化と安全性向上に大きく貢献すると期待されます。

✨ 研究成果のポイント

項目詳細意義
決定因子の発見**「電解液中のリチウムイオン化学ポテンシャル」**が、黒鉛負極の充放電反応(リチウムイオン単独挿入)の可否を示す定量的な指標であることを発見。
設計指針の明確化化学ポテンシャルを一定以上に高めることで、リチウムイオンが溶媒から分離(脱溶媒和)し、黒鉛へ良好に挿入できる条件を数値で判断可能に。
新規材料の実証化学ポテンシャルの概念に基づき、フッ素化エーテル溶媒が黒鉛負極と適合する有望な次世代電解液溶媒候補であることを実証。
開発の効率化手探りだった電解液探索から脱却し、数値を用いた合理的な設計が可能になる。

🔋 研究の背景と課題

リチウムイオン電池(LiB)は現代社会に不可欠ですが、さらなる高性能化には、充放電の鍵を握る電解液の抜本的な設計革新が求められています。

  • 従来の課題: 新しい電解液溶媒を使用する際、負極の黒鉛へリチウムイオンを挿入(充電)する反応を良好に起こすことが難題でした。
  • 問題のメカニズム: リチウムイオンが溶媒から分離(脱溶媒和)できず、リチウムイオンと**溶媒が一緒に黒鉛へ挿入する「溶媒共挿入」**という望ましくない反応が進行することが多かった。
  • これまでの開発: 黒鉛負極の充放電反応と電解液組成の関係が不明確だったため、電解液開発は定性的・経験則的な知見に基づいた「手探り」のアプローチに頼らざるを得ませんでした。
  • 現行の問題点: 現行の電解液で用いられる炭酸エチレン(EC)は、燃焼性や高電圧耐性などの点で限界があり、安全性や性能向上へのボトルネックとなっていました。

🔎 研究の内容と成果

研究グループは、充放電反応の決定要因として、リチウムイオンの安定性を示す化学ポテンシャルに着目し、様々な電解液でその値を測定し、負極の充放電挙動との相関を調べました。

  1. 相関関係の発見: 化学ポテンシャルが低い場合(リチウムイオンが溶媒と強く結合し安定している場合)は、脱溶媒和が起こらず、溶媒共挿入の問題が発生しました。
  2. 成功条件の特定: 化学ポテンシャルを一定以上に高める(リチウムイオンを不安定化させる)ことで、リチウムイオンが溶媒から分離し、黒鉛へのリチウムイオン単独挿入が良好に進むことを実験的に確認しました。
  3. 既存概念との比較: この化学ポテンシャルと充放電反応の相関は、従来反応の支配因子と考えられてきた固体電解質界面(SEI)との相関よりも高いものでした。

🌐 社会的影響と将来への展望

本研究成果は、リチウムイオン電池の開発プロセスに以下の変革をもたらします。

  • 開発の合理化: 明確な**数値基準(リチウムイオン化学ポテンシャル)**に基づいて電解液材料を設計できるようになります。
  • プロセス効率化: 新しい電解液を設計する際、化学ポテンシャルをシミュレーション技術(マテリアルズインフォマティクスなど)に組み込むことで、黒鉛負極への適合性を事前に予測できるようになり、電池開発のプロセスが飛躍的に高効率化します。
  • 高性能化の加速: 高性能電解液の迅速な開発により、電気自動車(EV)、再生可能エネルギー貯蔵装置(ESS)、データセンター用無停電電源(UPS)など、電池を大量に使う社会インフラにおける「高電圧化」「長寿命化」「安全性向上」が加速します。

📝 特記事項

  • 論文掲載: 国際学術誌 『Advanced Materials』 (2025年10月25日オンライン公開)。
    • タイトル:“Electrolyte Li+ Chemical Potential Correlates with Graphite Negative Electrode Reactions in Lithium-Ion Batteries”
  • 研究支援: 日本学術振興会科学研究費助成事業の一環として実施されました。

このブレイクスルーは、次世代リチウムイオン電池の開発において、設計の自由度とスピードを大幅に向上させる鍵となります。

出典:https://resou.osaka-u.ac.jp/ja/research/2025/20251117_1

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