韓国の基幹産業の一つである二次電池業界が、かつてない荒波に揉まれています。米国の政策転換と電気自動車(EV)市場の冷え込みが直撃し、数兆ウォン規模の契約が次々と霧散しています。「ポスト中国」の旗手として米国に巨額投資を行ってきた韓国メーカー各社は、いまや生存をかけた構造改革と、中国勢が支配する低価格市場への参入という、極めて困難な選択を迫られています。
1. 崩れ去る「米国ドリーム」:巨額契約の相次ぐ破棄
韓国最大手のLGエナジーソリューション(LGES)を筆頭に、北米市場での供給計画がドミノ倒しのように崩壊しています。
- 1ヶ月で約13.6兆ウォンの損失: 2025年12月だけで、LGESの昨年の総売上高の半分以上に相当する契約が消滅しました。
- フロイデンベルグとの決別: 米バッテリーパック大手との27.9億ドル(約3.9兆ウォン)規模の契約が解除。納品済みはわずか4%で、事実上の全面白紙化です。
- フォードの離反: 65億ドル規模の供給契約がキャンセルされたほか、SKオンとの合弁事業も解消。フォードは今後、中国CATLの安価な技術をライセンス導入する方針に転換しました。
- 資産売却による現金確保: LGESはホンダとの合弁工場の資産をホンダ側に約4.2兆ウォンで売却。投資を縮小し、手元の現金を確保する防衛策に出ています。
2. 背景にある「3つの逆風」
A. 「トランプ2.0」による補助金撤廃
トランプ政権による最大7500ドルのEV税額控除の縮小・撤廃が決定打となりました。これにより、消費者のEV離れが加速し、自動車メーカーは利益率の高いハイブリッド車(HEV)や内燃機関車へと大きく舵を切っています。
B. 中国勢(LFPバッテリー)による「価格破壊」
韓国企業が得意とするのは「高価・高性能な三元系(NCM)バッテリー」ですが、現在の市場が求めているのは「安価なLFP(リン酸鉄リチウム)バッテリー」です。
- 欧州でのシェア逆転: 欧州のEVバッテリー市場における韓国3社のシェアは35%まで低下(10ポイント減)。対して中国勢は64%と圧倒的な強さを見せています。
C. 逃げ道のESS(エネルギー貯蔵システム)も多難
EVの代わりに注力しようとしているESS分野ですが、ここでも中国勢が低価格を武器に先行しています。また、ESSは需要の波が激しく、安定した生産計画が立てにくいという構造的課題もあります。
3. まとめ:今後の展望と課題
韓国バッテリー業界が再び成長軌道に戻るためには、これまでの「高性能・高価格」路線からの脱却が不可欠です。
- LFPバッテリーの早期量産: 中国勢に引けを取らないコスト競争力を持てるか。
- 次世代技術(全固体電池など)での逆転: 次のパラダイムシフトで主導権を握れるか。
- 特定市場への依存脱却: 米国の政策に左右されない、真にグローバルな顧客ポートフォリオの再構築。


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