FACILEプロジェクトは、リチウムイオン電池のエネルギー密度と持続可能性を飛躍的に向上させることを目指した研究開発プロジェクトです。これは、従来のグラファイトに代わる革新的なシリコンベースのアノード(負極)材料を開発することに焦点を当てています。
| 項目 | 詳細 |
| プロジェクト名 | FACILE (Flexible and Advanced Composite Anode for Li-Ion BattEries) |
| 目的 | 革新的なシリコンアノードにより、リチウムイオン電池の実用エネルギー密度を最大250%向上させ、環境フットプリントを改善する。 |
| 技術 | 繊維・不織布製造プロセスと半導体・太陽光発電の高度な工業コーティング技術を組み合わせた、繊維ベースの導電性不織布基板上のシリコンアノード。 |
| 目標性能 | 実用容量で1グラムあたり1,000ミリアンペア時(mAh/g)以上の達成。 |
| 期間 | 2025年7月1日~2027年6月30日(24か月間) |
| 資金提供 | バーデン=ヴュルテンベルク州経済・労働・観光省から128万ユーロ |
| 拠点 | ドイツ、バーデン=ヴュルテンベルク州 |
🔋 シリコンアノードの優位性と課題
🚀 圧倒的なエネルギー密度(容量)
- グラファイト(従来のアノード材): 理論上の容量は370 mAh/g。
- シリコン(新アノード材): 理論上の容量は最大4,200 mAh/gと、グラファイトの10倍以上の容量を持っています。
- 持続可能性: シリコンはグラファイトと同程度のコストで、世界中に豊富に供給されているため、より持続可能な資源です。
🚧 克服すべき課題:体積変化への対応
シリコンをアノードに採用する際の最大の課題は、充放電時に体積が著しく変化することです。
- 体積変化により、アノードに亀裂や剥離が生じ、電池の寿命(サイクル特性)が低下し、最終的に故障につながります。
✨ FACILEプロジェクトの革新的なアプローチ
FACILEプロジェクトは、上記の課題を解決するために「亀裂ではなく繊維」のアプローチを採用しています。
- 柔軟な不織布基板:
- 繊維ベースの導電性不織布をアノードの基板として使用します。
- この柔軟な構造が、シリコンの充放電による大きな体積変化を補償・吸収するように設計されています。
- ハイブリッド技術:
- 紙/不織布製造プロセス(基板)と半導体/太陽光発電の高度なコーティング技術(シリコンの堆積)を組み合わせて、高性能で耐久性のある複合材料を作成します。
これにより、高性能、長寿命、そして持続可能な「メイド・イン・バーデン=ヴュルテンベルク」の電池が実現すると期待されています。
👥 参画パートナーと役割
バーデン=ヴュルテンベルク州の産学連携コンソーシアムが、材料開発からセル製造まで、バリューチェーン全体をカバーします。
| パートナー | 役割 |
| centrotherm international AG(コーディネート) | 繊維材料にシリコンコーティングを施す革新的な高スループットシステムの開発。 |
| ZSW(バーデン=ヴュルテンベルク州太陽エネルギー・水素研究センター) | 開発されたアノードの特性評価、大型テストセルでの製造、安全性と性能の試験・検証。 |
| Phoenix NonWoven GmbH & Co. KG | 特殊な繊維ベースの導電性不織布基板の開発と提供。 |
| ISC Konstanz eV(国際太陽エネルギー研究センター・コンスタンツ) | 不織布と銅箔の結合に関する研究。 |
| コンスタンツ大学(太陽光発電部門) | 材料分析の実施。 |
ZSWは、容量最大100 Ahの大型リチウムイオンセルを製造できるパイロット生産ラインや、バッテリー安全性試験センターといった長年の経験と設備をプロジェクトにもたらし、最終的な実用化に向けた検証を担当します。
プロジェクトが成功すれば、電気自動車(EV)や定置用蓄電池など、高性能で持続可能な電池技術が不可欠な分野でのドイツおよび欧州の競争力強化に大きく貢献することが期待されます。


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