CATLの子会社であるBrump Recycling(ブルンプ・リサイクリング)は、使用済みバッテリーからの主要材料回収率が極めて高い水準に達したことを発表しました。この進展は、世界的なEV市場の拡大と、それに伴うバッテリー原材料の安定供給および環境負荷低減の要求が高まる中で、特に重要な意味を持ちます。
報告された主要な進捗と成果
| 回収材料 | 回収率(自社報告) | 採用技術 | 処理量(2024年) |
| ニッケル (Ni), コバルト (Co), マンガン (Mn) | 99.6% (ほぼ100%) | DRT (方向性リサイクル技術) | 使用済みバッテリー:12万トン以上 |
| リチウム (Li) | 96.5% | DRT (方向性リサイクル技術) | リサイクルリチウム塩:1万7100トン |
出典:CN EV PostによるCATLのWeibo公式声明の引用
Brumpのリサイクル技術と戦略的意義
1. 高効率を実現する「DRT」技術
Brumpが採用する「DRT(方向性リサイクル技術)」は、インテリジェント解体、湿式冶金、高度な材料回収プロセスを組み合わせることで、従来の技術よりも格段に高い回収率を達成しています。特にニッケル、コバルト、マンガンといった希少金属でほぼ100%に近い回収率を誇ることは、バッテリーのライフサイクル全体における資源効率を最大化する上で画期的です。
2. CATLの垂直統合戦略における重要性
Brumpは2015年にCATLが過半数株式を取得して以来、その中核的な戦略部門となっています。世界最大のバッテリーメーカーであるCATLは、リサイクル子会社を通じて、バッテリー原材料のリサイクルから新しいバッテリーへの再加工までを垂直統合しています。
- 大規模工業団地: CATLは中国の宜昌市と仏山市に、原材料のリサイクルとバッテリー生産を統合した大規模な工業団地を建設しました。
- 「重要な原材料源」: EV市場の急速な成長を背景に、リサイクルされた材料は、新規採掘に頼らない「重要な原材料源」として、CATLのサプライチェーンの安定化に不可欠な役割を担っています。
3. グローバルなパートナーシップと展開
Brumpは、CATLグループの一員として急速に拡大しており、その事業は中国国内に留まりません。
- 自動車メーカーとの提携: メルセデスやフォルクスワーゲンといった大手自動車メーカーと提携し、使用済みバッテリーの回収・処理ネットワークをグローバルに構築しています。
- 国際的な工場への関与: インドネシアにおけるCATLの新しいバッテリー工場のプロジェクトにも深く関わっており、リサイクル技術と材料供給を国際的な製造拠点と連携させる戦略を進めています。
関連情報:バッテリーリサイクル市場の背景
1. リサイクル需要の急増
EVの普及に伴い、今後10年で大量の使用済みバッテリーが発生すると予測されています。これらのバッテリーには、高価で偏在するニッケル、コバルト、リチウムなどが含まれており、経済安全保障の観点からもリサイクルは不可避です。中国(CATL/Brump)、欧州(リサイクル規制)、北米(IRA関連優遇措置)など、世界的にリサイクル技術開発とインフラ整備が加速しています。
2. 湿式冶金と乾式冶金
バッテリーリサイクル技術は、大きく「乾式冶金」と「湿式冶金」に分類されます。
- 乾式冶金(Smelting): バッテリーを高温で溶融し、金属を合金として回収する手法。エネルギーコストが高い傾向がありますが、前処理が比較的容易です。
- 湿式冶金(Hydrometallurgy): 化学溶液(酸など)を用いて金属を溶出・分離・精製する手法。高純度の材料を個別に回収できるため、特にリチウムなどの回収に適しています。BrumpのDRT技術は、この湿式冶金を高度化させたものと見られます。
3. Brumpの歴史的経緯
- 設立: 2005年に設立され、当初はリチウムバッテリーのリサイクルに注力。
- 方向転換: 2011年に牽引用バッテリーのリサイクルに重点を移行。
- CATL傘下へ: 2015年にCATLの子会社となり、世界最大のEVサプライヤーのサプライチェーンの一部として、その規模と技術力を飛躍的に向上させました。
まとめ
CATL子会社Brumpによるニッケル、コバルト、マンガンのほぼ100%(99.6%)、リチウムの96.5%という驚異的な回収率は、バッテリーリサイクル技術が商業的に極めて成熟した段階に入ったことを示唆しています。この高効率リサイクルは、CATLのサプライチェーンを強化し、希少資源の安定供給を確保するだけでなく、EV産業全体の持続可能性と環境フットプリントの改善に大きく貢献するものです。Brumpの進捗は、リサイクルが「廃棄物処理」ではなく、「都市鉱山」としてバッテリー原材料の主要な供給源となる時代を先取りする動きと言えます。


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