ライス大学、「酸フリー」でLIB材料を回収する新技術を開発

リサイクル

ライス大学のジェームズ・ツアー氏率いる研究チームは、使用済みリチウムイオン電池(LIB)からリチウムと遷移金属を迅速に分離・回収する革新的な技術「2段階フラッシュジュール加熱・塩素化・酸化 (FJH-ClO) プロセス」を開発しました。

この技術は、エネルギー消費、化学薬品の使用、および廃水発生を特徴とする従来の湿式リサイクル技術に代わる、酸を使わない省エネ・高効率な方法として注目されています。

💡 プロセスの仕組みと特徴

FJH-ClOプロセスは、短時間の熱(フラッシュジュール加熱)とシンプルな化学反応を利用して、貴重な材料を効率的に回収します。

ステップ動作目的
第1段階 (FJH-Cl₂)電池材料を塩素ガスで短時間加熱(フラッシュジュール加熱)し、分解。遷移金属(コバルトなど)を塩素化し、酸化反応の準備を整える。
第2段階 (FJH-O₂)**空気中(酸化環境)**で再度加熱(フラッシュジュール加熱)。リチウム以外のほとんどの金属を酸化物(水に溶けにくい形態)に変換し、リチウムと分離可能な形態にする。

分離の鍵:リチウムの特性

  • ほとんどの遷移金属は第2段階の酸化により酸化物として残ります。
  • リチウムは他の金属ほど酸化物を形成しにくいため、塩化物(LiCl)として残留します。
  • 最終的に、この**リチウム塩化物(LiCl)**を水で簡単に抽出・回収することができます。

💰 FJH-ClOプロセスの主な優位性

この新しいリサイクル方法は、環境的および経済的に大きな利点をもたらします。

  • 環境負荷の低減:
    • 酸フリー: 強力な酸(硫酸など)の使用が不要。
    • 廃水削減: 従来法と比較して廃水の発生を大幅に抑制。
    • エネルギー効率: 必要なエネルギーは既存の方法の約半分に削減。
  • 効率性とコスト削減:
    • 迅速な処理: 長時間の浸出プロセスが不要。
    • 高収率・高純度: リチウム、コバルト、グラファイトなど、ほぼすべての有用な材料を高純度で回収可能。
    • コスト削減: 化学薬品の使用量が95%削減され、全体的なコストを大幅に削減。

🌍 関連情報と将来への影響

1. 高まるLIBリサイクルの必要性

電気自動車(EV)や携帯電子機器の普及により、LIBの需要は世界的に急増しており、それに伴い使用済みバッテリーも増加しています。コバルトなどの主要なバッテリー材料は特定の地域に偏在しているため、資源の安定供給と持続可能性の観点から、効率的なリサイクル技術の開発は国際的な喫緊の課題となっています。

2. フラッシュジュール加熱(FJH)技術

この研究のベースとなっている「フラッシュジュール加熱(FJH)」は、ジェームズ・ツアー氏の研究室が開発した技術で、数秒という極めて短い時間で数千℃の超高温を発生させ、廃棄物を高付加価値な材料(例:グラフェン)に変換するために使用されてきました。FJH-ClOは、この高速加熱の制御技術をリチウムイオン電池のリサイクルに応用したものです。

3. 実用化への展望

研究チームはすでに実験室規模でこのプロセスを実証しており、今後はスタートアップ企業であるFlash Metals US(Metallium Ltd.の一部門)を通じて、このプロセスを大規模化し、バッテリーサプライチェーンへの統合を目指しています。

この技術がスケールアップに成功すれば、地球に新たな負荷をかけることなく、貴重なバッテリー材料の需要を満たすための「青写真」となることが期待されます。

出典:https://techxplore.com/news/2025-11-joule-method-recovers-lithiumion-battery.html

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